高血圧・過緊張

50代女性

主訴:高血圧・過緊張

現病歴:検診で前から血圧が高めと言われていたが、今月、170~180くらいまで上がり、薬を飲んだ方がよいと言われた。よく歯を食いしばり、常に緊張しているように感じる。寝ているときにも緊張しているように感じる。起床時に力が入っていてスッキリしない。

その他の所見:精神的にも常に緊張している。夢は時々見る。頭痛があり、コーヒーで楽になる。肩こり、首筋のコリがひどい。お腹が前より空きにくい。少し字が震えてガタガタしている。舌やや胖大、滑苔。

平肝熄風の方剤を7日分渡した。
7日後来店。中途覚醒が減り、この5日くらいない。起床時、少しスッキリ感がある。同じ方剤をつづける。
さらに25日後、血圧が130~140程度になった。緊張感も減り、肩こりもずいぶん減った。
現在も同処方を継続中。

考察:熄風薬は降圧効果があるものが多く、高血圧にも使われる。骨格筋や血管平滑筋の過度の収縮を防ぎ、頭部の充血を除くようなイメージ。この方にも、よく効いてくれた。

アトピー性皮膚炎

30代男性

主訴:アトピー性皮膚炎

現病歴:数か月前、秋ごろからアトピーが悪化し始めた。小さい時にアトピーがあったが、中学生のころに治った。24歳ごろに再発し、かなりひどかった。その頃、漢方薬を数か月もらったが、効果がなく、食生活の改善を徹底して治癒した。3年ほど前からまた症状が出始め、憎悪と寛解を繰り返していた。肌はカサカサして赤みが強い。触ると熱い。

その他の所見:冷え症で手足が冷たい。冬になると、かじかむ事が多い。甘いものを空腹時に食べると胃が持たれやすい。痰が絡みやすい。夏以外は喉が渇かないのであまり水分を摂らない。甘いものが好き。飲酒5日/週。白黄苔、滑苔、やや暗紫色、舌下静脈怒張(+)

清熱利水薬や駆於血薬をいろいろと組み合わせていたが、2か月間全く効果なし。
手足が冷えやすいことから、附子なども試したが、逆効果だった。
一から方剤を考え直すことにして、便や舌の状態から、血熱を取る処方を中心に、去痰薬や数種類の駆於血薬を組み合わせた。
ここから、調子がよくなり出した。舌下静脈の怒張もときどき薄くなることもあった。
しかし、本治に至るのはなかなか難しく、現在も季節やその時の体の状態に合わせて継続して服用してもらっている。


考察:途中で諦めたく、投げ出したくなるほど効果が出なかったが、懲りずに付いてきてくださった。よく言われているが、桂皮と川弓はやはり要注意。冷えにこだわりすぎて、桂皮で何度か悪化してしまった。血熱を取る強い生薬でも、桂皮の副作用が取り切れなかった。ひとにもよるが、駆於血薬は桂枝茯苓丸を使わない方が無難。田三七などの化於薬を追加することで、漢方薬の効果が目に見えるようになった。

※文字化け防止のため、「病だれ+於」を「於」に置き換えている。

高血圧・過緊張

50代女性

主訴:高血圧・過緊張

現病歴:検診で前から血圧が高めと言われていたが、今月、170~180くらいまで上がり、薬を飲んだ方がよいと言われた。よく歯を食いしばり、常に緊張しているように感じる。寝ているときにも緊張しているように感じる。起床時に力が入っていてスッキリしない。

その他の所見:精神的にも常に緊張している。夢は時々見る。頭痛があり、コーヒーで楽になる。肩こり、首筋のコリがひどい。お腹が前より空きにくい。少し字が震えてガタガタしている。舌やや胖大、滑苔。

平肝熄風の方剤を7日分渡した。
7日後来店。中途覚醒が減り、この5日くらいない。起床時、少しスッキリ感がある。同じ方剤をつづける。
さらに25日後、血圧が130~140程度になった。緊張感も減り、肩こりもずいぶん減った。
現在も同処方を継続中。

考察:熄風薬は降圧効果があるものが多く、高血圧にも使われる。骨格筋や血管平滑筋の過度の収縮を防ぎ、頭部の充血を除くようなイメージ。この方にも、よく効いてくれた。

息苦しさ

20代女性

主訴:息苦しい、吸っても吸っても肺に入る感じがしない。吐くことはできる。

現病歴:1か月前から息苦しさを感じるようになった。病院にも通っているが、薬の効果は実感していない。

その他症状・所見:疲れやすいが、昼から体が動く。夜は平気、朝の方がしんどい。ストレスをため込む。1か月前から食欲低下。何となく元気がなく、消耗している様子。睡眠が浅く、疲れがとれない。寝付き、寝起き悪く、熟睡感がなく、夜中に起きる。夢もよく見る。胸やけを起こしやすく、胃薬を飲むことが多い。月経に関してはほとんど問題なし。

心血虚+気滞だと思われる。心血を補う処方と理気の方剤を組み合わせて10日分服用してもらった。
10日後、息苦しさを意識しないほどになった。睡眠に関しては寝付きが少しよくなったくらい。体のだるさはあまり変化なし。10日分同じ処方。
さらに10日後、息苦しさ、胸苦しさを感じなくなった。食欲は戻ってきている。どんなに眠くても午前5~6時に目が覚める。理気薬を増やして10日処方。
さらに10日後、6~7時くらいにゆるやかに目が覚めるようになってきた。同じ処方。
12日後、寝付きが良くなり、布団に入るとすっと眠れる。夜中に4回起きていたのが、1回になった。起きる予定の時間まで眠れるようになった。でも、熟睡感はまだあまりない。
その後、別の件で来店時に聞いたところ、以前の症状はよくなっていたので、服用し終わって薬を止めていたと。


考察:息苦しさにこだわらず、全体を見て方剤を決定した。「息苦しい、息を吸いにくい」という訴えからは、肺気虚、腎気虚、脾肺気虚、肝気鬱滞が肺に影響したなどが考えられる。理気の方剤を入れたが、肺気に作用する生薬はなく、量も少なくし、心血を補う処方をメインにした。全体の証を見て処方することの重要性を改めて感じた。

右肩の夜間痛

60代女性

主訴:右肩の夜間痛

現病歴:4カ月ほど前に、ジムで右肩を下にして足を動かす運動をしたときに違和感があった。2か月前から夜間痛があった。クリニック受診し、レントゲンは問題ない。MRIで右肩腱板損傷、右肩関節唇損傷と診断された。1か月ほど前からロキソニンを服用しているが、寝て1時間半で痛みで目が覚める。その後も、2時間ごとに起きる。暖かくなってからも痛み変わらず、日中も痛いことは痛い。

その他症状・所見:むくみ(-)、食欲あり。飲み物は温かいものを心がけている。酒・タバコ(-)。痛みのため、熟睡できず、睡眠で疲れが取れない。頭痛(-)。イライラ(-)。たまに耳鳴り。たまに喉のつまり。
         脈弦(-)、右関脈有力。淡紅舌、白苔、歯痕。肩の熱感(-)

夜間痛は於血や痰飲がからんでいると考えられる。もともと、健康に気遣っている方で、ほとんど他に症状がない。もとは脾気虚があり、筋肉の損傷に繋がったのかもしれないが、症状改善にはひとまず置いておく。不通則痛、不営則痛の考え方から、痛みの改善を図ろうとし、問診したところ、血虚や気虚、気滞はほとんど感じられなかった。筋肉が損傷したことによる痛みであり、去風湿薬と駆於血薬を組み合わせて薬を渡した。
7日後来店。4日目から、痛みで起きることがなくなったと。同じ薬を渡した。
さらに7日後来店。飲み始めてから10日後から夜間の痛みが完全に取れたと。1か月ほど服用して、夜間痛に関しては終了した。
その後、肩関節の可動域を広げるため違う薬方を継続中。

顔面マヒ

50代女性

主訴:顔面マヒ

現病歴
3日ほど前から、顔の左半分がマヒしている。目じりは下がり、口角もあがらない。2日前に脳のCTを撮ったが異常なし。以前も顔面マヒになったことがあり、その時に行った病院がコロナの影響で外来診療をしていない。近くの耳鼻科で薬(プレドニゾロンなど)をもらったが、あまり信用できなかった。知人から漢方薬が効くと聞いたので、薬が欲しい。今回は耳の後ろが痛い。

その他症状・所見
耳の後ろに皮膚病変なし。前額部と風池あたりに圧痛あり。全身の多汗。むくみ(+)。悪寒(-)。排尿は1日3回。冷たいものをよく飲む。梅雨が苦手。扇風機をつけたいが、風邪が苦手でしんどくなる。歯ぎしり(+)。マッサージに行くと、冷えていると言われるが自覚なし。
右-関脈実。左-数・実。舌-黄苔、裂紋、舌尖紅点、舌下静脈やや怒張。

 熱痰が経絡を阻滞していると思われる。清熱化痰薬、平肝熄風薬を合わせて服用してもらい、それでは豁痰作用がないため、加えて廣東牛黄清心元を初めの数日のみ服用してもらった。
 17日後に再度来店し、もう一度薬が欲しい、前よりかなり治りが早い、廣東牛黄清心元がよく効いたように感じたと。私が想定していたより回復が遅かった。半夏ではなく経絡の痰飲を除く天南星が入った処方に変え、熄風薬も多くし、前回同様、廣東牛黄清心元を数日分渡した。

帯状疱疹

 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス、いわゆる水ぼうそうの原因となるウイルスによって引き起こされます。子供のころにかかった水ぼうそうのウイルスが神経節に隠れ、大人になってからストレスや疲労による免疫力低下が引き金となり、再び活性化して発症します。
 最初期は、皮膚の違和感やピリピリ、チクチクとした痛みが出てきます。その後、発熱したり、リンパ節が腫れることもあり、続いて皮膚の発赤、水疱が現れます。水疱が破れるとかさぶたとなり、皮膚病変が現れてから2~3週間程度で皮膚症状が治まります。

 中医学では、湿毒や火毒などによって生じるとされます。毒というのは、発赤や腫脹、化膿を引き起こすものを指します。湿は正常な働きを失った水のことであり、湿を伴った毒により水疱が現れます。火は熱をもち炎症を引き起こすため、火を伴った毒により発赤、腫脹します。

 方剤は、水疱か発赤疼痛のどちらが強いかを判断して、湿と熱のどちらを主にするか決めます。湿が強ければ、麻黄・石膏や、車前子などの利水薬が入った処方を選び、熱が強ければ、黄連、大青葉などが入った処方を選びます。そこへ、抗ウイルス作用があるとされる生薬を加えることもあります。
 後にびらんが残り、治りにくければ、皮膚表面の水のめぐりを良くしたり、肉芽の生成を早める方剤を用います。
 また、痕が残るのを気にする場合、発赤や腫脹などの勢いがなくなってきたら、血の巡りをよくする薬を加えます。
 漢方薬を服用することによって、回復を早め、痕が残りにくくなるため、その点で、西洋薬に加えて漢方薬を服用する意義があります。

 高齢になると、皮膚が治っても、神経へのダメージから神経痛が残りやすくなります。焼けるような痛みや針で刺すような痛みが持続したり、何かが触れるだけで痛みが出たり、寒冷刺激などで痛みが生じてしまいます。これを防ぐには、やはり、早期治療が大切です。基本は西洋医学の抗ウイルス薬を服用することですが、加えて漢方を服用することで、神経痛も残りにくくなります。
 もし、神経痛が残ったとしても、痛みが誘発されるきっかけなどから、原因を探り、治療法を考えることができます。
 仕方ないと諦めずに、できるだけ早く、相談にいらしてください。

夏期休業のお知らせ

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2019年8月6日(木)

漢方薬局ハレノヴァの夏期休業日をお知らせいたします。

夏期休業期間/8月13日(木)~8月16日(日)

期間中、メールでのお問い合わせは受け付けておりますが、お返事は8月17日(月)以降となります。
また、オンラインショップの発送業務も停止いたしますので、予めご了承ください。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。

PMS(月経前症候群)

30代女性

主訴:生理に伴って、頭痛、生理痛、胸の痛み・ハリ、眠気、イライラが起こる。

現病歴:頭痛は以前は生理中のみだったが、生理前にも起こるようになった。2日ほどまえからこめかみあたりがジクジク押されているような感じ。生理痛は2日目の朝のみある。1週間前から胸の痛みやハリがあり、2日前から眠気やイライラがある。頭痛もちで、天気の悪い日に起こりやすく、こめかみが痛くなる。

その他症状・所見:舌はやや痩薄、淡紅~紅、薄白苔、舌下静脈怒張なし。月経周期30日、1~2日ずれることもある。月経期間6~7日。塊あり。

気滞+やや血虚だと思われる。のぼせなど頭部の熱はないため、清熱作用のない、理気+少し補血作用のある方剤を14日間服用してもらった。
14日後、この2週間は頭痛がなく、天気が悪い日でも問題なかった。冷えについては変化わからない。続けて同じ処方14日分。
さらに14日後、生理がきた。胸のハリがあったので、そろそろ不調がくるかと思っている間に生理になった。胸のハリと生理痛は少しあるが、イライラなし、頭痛なし、眠気なし。同じ処方14日分。
さらに14日後、概ね良好、夢を見なくなり、夜中に起きることもなくなり、朝までぐっすり眠れるようになった。貧血が少し心配で鉄剤を飲むか考え中。本人の希望で、補血の方剤を加えて渡した。
その後、漸減し、今では数か月に1度、不調が出たときのみ薬を取りに来ている。

考察:消化器症状や月経周期の乱れがなく、純粋な気滞に近かったことから、1つの処方で効果が早く現れたのだろう。
   ここに脾気虚や於血が深く関わっていると、もっと時間がかかったかもしれない。

不眠(中途覚醒)

50代男性

主訴:中途覚醒

現病歴:入眠後、途中で起きてからなかなか眠れない。起きる時間は2時、4時などバラバラ。起きた後はうつらうつらしながあ、いつの間にか寝て7時になる。寝汗は2週に一度ほど、食べてすぐに寝ることはない。夜中にトイレに起きることもある。少しの物音で起きる。紅舌、歯痕舌。

安神作用のある方剤と補血作用のある方剤を組み合わせて服用してもらった。7日後から良くなってきたとのこと。その後7日間同じように1日3回で服用してもらった後、寝る前1包で3週間ほど続けて終了となった。

足のむくみ

80代男性

主訴:足のむくみ

現病歴:両足の膝から下にむくみがある。初めは足首から下だったが、半年ほど前からひどくなってきた。クレアチニン1.0程度、推算GFR50程度。腎臓が悪く、病院へ行っているが、Drはむくみに関してあまり気にしていないとのこと。

その他症状・所見:靴下の跡が付き、触ると固い。押すと凹みが付き、なかなか元に戻らない。痛みはない。下腿に細絡があり、肌が乾燥している。上肢は乾燥していない。爪がもろく、縦しわがある。舌は淡紅、薄白苔、於斑。

細絡、於斑から、活血化於と利水の効能のある方剤を選んだ。高齢だが、補気が少ない方剤のため、体のだるさなど何か不調があれば連絡するようにお話しして、まず7日分服用してもらった。
7日後、お連れ様曰く夕方のむくみがマシになった。触った感じも柔らかくなった。と。客観的には、変化が若干あるかなというくらいだったが、そのまま同じ処方を14日分お渡しした。
さらに14日後、初めに比べて、ふくらはぎが見違えるほど細くなっていた。足首より上は柔らかくなったが、足首以下はまだ固く、むくみもある。
その後、さらに2~3か月ほど服用し、その間、他に薬を加えて服用してもらったが、足首のむくみは取り切れないまま、一度止めてみるとのことで終了した。

考察:腎機能低下、夜間頻尿もあるため、腎陽虚+利水の方剤なども加えたが、足首以下のむくみは取り切れなかった。細絡も残ったままだったので、駆瘀血薬を追加したり、九味檳榔湯や補気薬を考えてもよかったのかもしれない。
   もしくは、年齢から考えると、漢方の限界だったのかもしれない。それとも、名医なら治せていたのだろうか。最初から考えると7割近く症状が取れていたが、残念で申し訳なかった。

老人必用養草12(精神の補養について2)

香月牛山

2020年7月9日(木)

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は精神の保養に関する部分の後半を読んでみます。


【原文】
・悲の情は心胞絡の主る所なり。年老いては気弱くして、憂にだも堪えがたし。悲はまた憂よりも気をけづる事倍せり。『素問』にも「悲ときは気消す」とあり。憂にしづむといふも、心のやる方もなきものなれど、涙の催すほどなる事なし。少のかなしみにもまづ涙のさきだつをもて、その重き事をしるべし。老人のとぼしき元気いかんぞ此悲に堪んや。悲はおほくは死別なり。老人には死別をつつみかくして聞せぬやうにすべき事なり。

・恐の情は腎の主る所なり。『素問』に「恐る時は気下る」とあり、老人は陽気下行して腎気なを弱し。恐怖の情を起す事なかれ。ここをもて盗賊などの入来るとても、老人の耳にはいれぬやうに取はかるべきなり。あるひは険岨なる山、深き淵などある所を見る事なかれ。恐懼のおもひをなして病を生ずる類多し。


・驚の情は胆の主る所なり。老人は気弱くして物を決断する事なし。少しの事にもおどろきやすし。ちかきあたりの火災などの時も、まづはやく立退しむべきなり。物をただおだやかにいひなして、心をおさめしめて躁すべからず。『素問』にも「驚く時は気乱る」とあり、能々心得べき事なり。


・上にいふところの七情は、医家に説所にして、もつぱら病を生ずるの事をいふなり。儒家の七情に愛・悪・慾を入て其名を異すといへども、畢竟はおなじ事なり。医家の思といふ内に此三つもこもるなるべし。此七情は人にそなはる所にして、賢愚老若共に智事なし。大過せざるやうをつねに工夫すべし。わきて慾情は七情の根本なるべし。慾とはほつする事にて、我心にかなひ我身によき事なれば、是非ともにとげたきの志をいふなり。
 (中略)愚なる人は、ただ己のほつする所みな道理にあらぬ私慾のみにて、しゐて貪る心多し。是、人の大悪情なり。
 (中略)老人は気弱く、義心薄くなりて慾ふかきに似たり。孝子順孫ありて、その分限よりも厚く衣食財宝などを奉るといへども、心にあきたる事なく、ただ不足のみおもひて子孫に対して怒を起す事おほし。これ人倫の道を害するのみにあらず。元気を耗して寿命を縮る事なり。能々心得て慾情を起す事なかれ。

【訳文】
・悲しみの感情は心胞絡が主る所である。年老いると気が弱くなり、憂い事にさえ耐えづらい。悲しみは憂いよりも倍も気を消費してしまう。『素問』にも「悲しむと気が消える」とある。憂いに心が沈むと言うのも、心のやる方もないことだが、涙が出るほどになることはない。少しの悲しみでもまず涙が先立って出てくることから、悲しみというものが重いことを知る。老人の少ない元気がどうやってこの悲しみに耐えることができるのか。悲しみは多くは死別である。老人には死別について包み隠して聞かせないようにするべきだ。

・恐れの感情は腎が主る所である。『素問』に「恐れるときは気が下がる」とあり、老人は陽気が下降して腎気はなおのこと弱い。恐怖の感情を起こしてはいけない。なので、盗賊などが入ってきたとしても、老人の耳には入らないように取り計らないといけない。あるいは険しい山、深い淵などがある所を見てはいけない。恐れの感情を抱いて病気が生じる人が多い。

・驚きの感情は胆が主る所である。老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く物事を決断することができない。少しのことにも驚きやすい。近所での火災なども、まず初めに早く避難させるべきである。物をただ穏やかに話し、心を修養して騒いではいけない。『素問』にも「驚くときは気が乱れる」とあり、よく心得るべきことである。

・以上に言う七情は、医者が説く所であり、病気を生じることを言っている。儒家の七情には愛・悪・慾が入っていて、名前が違うと言っても、結局は同じ事である。医者が“思”と言う中にこの3つも含まれている。この七情は人に備わっているが、賢愚老若すべての人が知らない。大きな過ちのないように常に工夫をしなくてはいけない。とりわけ欲情は七情の根本である。慾とは欲することで、自分の心身に適したことなら、ぜひとも遂げたい意志をいうのだ。
 (中略)愚かな人は、ただ自分が欲することは全て道理に合わない私欲だけであり、無理にでも貪る心が多い。これは人の非常に悪い感情である。
 (中略)老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く、義理の心が薄くなって欲が深くなる。孝子順孫(父母や祖父母につくす子供)がいて、その身の程よりも多く衣食財宝を献上するといっても、満足することがなく、ただ足りないとだけ思って子や孫に対して怒りを起こすことが多い。これは人倫の道を害するだけでない。元気を消耗して寿命を縮めることである。よく心得て欲を起こしてはいけない。


以上をまとめると、
・悲しみ、特に死別は老人には聞かせない方がいい。
・恐怖の感情も避ける。
・驚くことも避けて、騒がないようにしなくてはいけない。
・欲を抑えることが大事である。
ということです。


次は、体の保養のお話後半です。

PMS(月経前症候群)

PMS(月経前症候群)は、生理の3〜10日位前から起こる体や気持ちの不調で、生理が来ると症状が弱くなり、消えていくものを指します。
月に一度、有無を言わさず来る生理。PMSがひどい人にとって、苦行の期間です。
生理というのは、ベッドを毎月新調して、赤ちゃんを迎える準備をするためのものです。こんな素敵なことなのに、痛みや気分の不調、体のだるさや肌荒れなどに悩むのは、何だかギャップがありすぎて、腑に落ちません。
でも、それは、バランスが崩れたことで出てくる、体からの黄信号かもしれません。
生理痛やイライラや落ち込みなどの気持ちの変化もなく、あったとしても、意識するレベルではないのが、理想の状態です。
特に、赤ちゃんを産みたい人、そうでない人も、早いうちにバランスを整えて、体や気持ちの不調なく、スッキリと生理を迎えられるようにしましょう。

体質を判断するには、特に生理の状態を詳しくお聞きします。
生理周期、期間、量、色、塊の有無、生理期間の中で痛みや不調の出るのはどの時期か、経血が出ると楽になるのか、悪化するのかなど、細かく教えていただきます。
一度、ご自分の生理の状態をじっくり観察して、メモしてくださるといいかもしれません。
その他、汗、のぼせ、体の冷え、食欲などをお聞きし、舌の状態なども確認して、総合的に体質を判断します。

使う薬は、もちろん人それぞれ違います。
イライラや胸のハリなどの気の巡りが悪い(気滞)症状が強ければ理気薬、冷えが強ければ温裏薬、食事の不摂生や体に熱を溜めやすい体質なら清熱利湿薬、消化吸収が悪くて気(エネルギー)や血(けつ)を作れていなければ(脾気虚なら)補気薬や補血薬、生まれ持った体質で腎が弱かったり房事過多などで腎を傷つけてしまっていたら補腎薬を中心に、程度によって駆於血薬などを合わせていきます。

崩れたバランスを元に戻すには、早めの対策が必要です。
どんな病気も、こじれると、治りにくく、症状も強くなっていきます。
これからの人生を楽しく過ごすためにも、漢方で早めにPMS対策をしましょう。

胃のつかえ

70代女性

主訴:胃のつかえ、食欲不振

現病歴:5月中旬に来店。一度体調を崩してから、スッキリしない。食欲がない。お腹に入らない。横になりたい。頭から汗が出る。胃が重い。紅舌、老、黄厚苔(中央から奥)、数脈、やや弦。みぞおちの痞え(+)。もとから便秘気味。

脾胃の気滞をとる方剤を10日間服用してもらったが、無効。
便秘気味、心下痞から、瀉心湯類と、降濁作用の強い方剤に変更。
4日分服用したところ、便通はよくなったが、やはりまだ胃が痞える。食べていないときはどうもないが、食べると痞える。
そこで、瀉心湯を香蘇散に変更。
5日分服用したところ、合っているように思う、調子が良いとのこと。

考察:黄厚苔から瀉心湯を選んだが無効だったため、『方函口訣』の「鳩尾ニテキビシク痛ミ昼夜悶乱シテ建中瀉心ノ類ヲ用ユレドモ寸効ナキ者に与テ意外ノ效ヲ奏ス」から、香蘇散を選んだ。エキス剤は蘇葉の香りがかなり弱いので、原末の製剤にした。
   今回は、一日中悶えるほどのみぞおちの痛みではなかったが、ちゃんと効果があった。
   建中湯、瀉心湯と香蘇散では適応する病態が違うはずなので、うでを磨けばちゃんと判断できるのだろうか。それとも、浅田宗伯も迷うほど、証が似ているのだろうか。

歯の痛み

40代女性

主訴:歯の痛み

現病歴:歯科治療をした後、抗菌薬をもらって数日間服用したが、効果がなく歯が痛い。昨晩は痛みでよく眠れなかった。

第三世代セフェム系を処方されていた。その時点で、ちゃんと抗菌薬を使う先生の所へ行った方がいいのではないかと思った。が、それは置いておく。〔第三世代セフェム系は、バイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が悪く、ほとんど吸収されない。忽那先生の言う、DU(大体うんこ)処方であり、また、岩田先生は第三世代セフェム系を選択するケースなどほとんど思いつかないと言う。〕

すぐに効かせるために、新今治水(当店に販売用では置いていない)をつけてもらい、寝る前に清熱解毒の散剤(エキス剤ではなく生薬の粉末)を水に溶かしてうがいをして飲み下すように指示。3日間、朝昼服用と寝る前に含嗽使用とした。
使用したその日から痛みがほとんどなくなり、2日目以降は新今治水は使用せず、漢方薬だけを3日服用して治癒した。

考察:新今治水もすぐに痛みを取るために効果があったと思うが、漢方薬がしっかり効いたと思われる。黄連解毒湯を使用したが、エキス剤ではなく散剤を使ったのは、黄連の量が割合も量も、エキス剤より多いという理由からだった。口内炎や歯肉炎の場合、帰経から考えて、黄連、山梔子、黄柏が適応になると思われる。
   直接、患部に当てられない部分の炎症には、程度によって、清熱消腫の生薬を合わせた方がいいように思う。

生理痛

30代女性

主訴:生理痛

現病歴:社会人になってから生理痛に悩まされるようになった。最近は排卵痛もある。肩こりや首コリなどもある。腰から下、太もも、お尻が冷える。腰痛、腰のだるだもあり。むくみがあり、トイレの回数は少ない。

血、水の巡りが悪いため、冷え、痛みが出ていると判断
まずは活血化於の薬を服用してもらい、生理の痛みはほとんどなくなった。
冷え、排卵痛はまだ続いているとのこと。
胞宮於阻もあり、引き続き、活血と温経散寒、水巡りもよくするお薬にして服用してもらった。
冬でも冷えはほとんどなくなり、生理痛もなく快適に過ごしているとのこと。