老人必用養草4(飲食について:麺類・酒)

香月牛山

2019年7月10日(水)

 引き続き、『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
 この本は、以前に紹介した『小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)』の香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
 老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

 今日は前回の続きで、食養生の麺類、酒の部分を読んでみます。

【原文】
・『本草』にも「蕎麦を折々食って腸胃の垢を去べし」とあり。厚味の人などは打てかし食ふべし。妨なし。されども老人の陰血よはく、脾血かはきたるに、腸胃の垢を去やうなる物を食ふ事よろしからず。多く食へば泄瀉をなし、或は卒中風を発する者多し。
【中略】惣て湿麺の類少く食ふ時は害なし。今の人は湿麺を食ふに、腹に満ざればやまず。故に害をなす事多し。

・酒は人に益あり。陽気をたすけ、血気をやはらげ、食気をめぐらし、腸胃を厚くし、皮膚を潤し、憂をわすれ、胸を発して意を暢て心をたのしましめ、寒湿をさり、悪気をころし、風寒暑湿の気にをかされず。夏は涼しく、冬は寒気をふせぎ、中をあたため、諸の食毒、諸の薬毒を解し、薬の勢をめぐらす。
【中略】生まれつきてこれを嗜む老人、つねに少く飲ときは、上にいふ所のごとく其益多し。
【中略】老人の気血をやしなふ事、酒にまされる物なし。され共、上戸に生れつきたる人は少飲て楽しむ事をしらず。口腹にかなふ故に、十分にのみて元気をやぶり、脾胃を損じて大病を生ず。壮年の人だも過酒すれば身をそこなふ。いはんや老人の気血うすき、此はげしき純陽の気に堪べけんや。
【中略】その人の酒量よりもひかへめに飲事をしるべし。ひかへ過すとおもはば、よきほどよりも過ぐべし。よきほどとおもはば、いつにても分量よりは過べし。能々心得べき事なり。

【訳文】
・『本草綱目』にも「蕎麦をときどき食べて胃腸の垢(あか)を取るのがよい」とある。濃い味を好む人は自分でそばを打って食べるのがよい。体に障ることはない。しかし、老人の陰血(体をつくっている細胞など)は弱く、脾血(消化器を巡る血)が少ないので、胃腸の垢を去るようなものを食べるのはよくない。多く食べれば、下痢をするか、或いは脳卒中になるものが多い。
【中略】湿麺(うどん、そうめん、そばなど)は全て、少しだけ食べるなら害はない。今の人は湿麺を食べるときは、腹いっぱいになるまで食べるのをやめない。なので害となることが多い。

・酒は人によいことがある。陽気(体の熱やエネルギー)のはたらきを助け、気血の循環をよくし、食欲や消化のはたらきをよくし、胃腸を丈夫にし、皮膚を潤し、気にかかることを忘れさせ、胸のわだかまりを発散して、心をのびのびとさせて楽しませ、体の冷えや水を去り、体外からの邪気を殺し、気候や気温などの外からの刺激で体をこわさないようにする。夏は体を涼しくさせ、冬は冷えを防ぎ、胃腸を温めて、様々な食べ物の毒、様々な薬の毒を消し、薬効を体にめぐらせる。
【中略】元来、酒をたしなむ老人は、少ない量を飲むなら、さきに言ったような利益が多い。
【中略】老人の気血を養うには酒より良いものはない。しかし、大酒家に生まれた人は少なく飲んで楽しむということを知らない。おいしいからと、たくさん飲んで元気を損ない、胃腸を悪くして大病を生じる。まだ若い人も量を過ぎれば体を害する。言うまでもなく、老人のように体力が衰えてるものは、激しい純陽の気に(体の機能を亢進させるだけで栄養とならないので)体が耐えられない。
【中略】人それぞれの酒量よりも控えめに飲むことを考えないといけない。控え過ぎていると思えば、適量よりも多いものだ。適量だと思えば、必ず量が多すぎる。よくよく心得るべきことである。


 蕎麦が胃腸の垢を取るというのは、蕎麦は、体を冷やし体にこもった余分な熱をとること、食物繊維が豊富なことを指すのだと思います。蕎麦は胃腸が弱い人には適さず、多く食べすぎてはいけません。やはり、ここに書いてある通り、嗜む程度に食べるのがいいのでしょう。
 お酒の効能については、多くの人が実感していることが並べられています。お酒を飲むと血行が良くなり、食欲が増し、気分がよくなるというのはよくわかることです。ただし、「風寒暑湿の気にをかされず(気候や気温などの外からの刺激で体をこわさないようにする)」というのは一見納得いきません。酒を飲んで冷たい風に当たれば、体が冷えてかぜをひくことがあります。しかし、さらに先を読むと、少ない量ならばという注意があり、合点がいきます。少量なら、前に書いてあるような効能があるのであって、飲みすぎると体への害ばかりになります。
 お酒は適量が大事です。ここに書いてあるように、多くの場合、控え過ぎと思える量より少ないくらいがちょうどいいということを知らず、適量よりずっと多い量を飲んでしまうということを心に留めておかないといけません。
私も飲み過ぎてしまうので、自省の意をこめてこの部分を取り上げました。



 さて、今回見た食養生の部分は、もう少しあり、次回で終わりです。
次はお茶、タバコのお話です。

梅雨も楽しく。

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2019年6月28日(金)

関西はやっと梅雨に入りました。
じめじめ、重だるいという体の反応がでてきやすい時期です。
このような症状を感じやすい方は、からだに余計な水がたまりやすい方が多く見受けられます。

むくみがあったり、お腹がちゃぽちゃぽ鳴るなぁ、天気が悪いと調子が崩れるなぁという方は
余分な水が溜まっている状態です。

一口にむくみといってもそこには様々な原因があります。

ここでまず、その原因を説明する前に
少し簡単に、からだの水巡りの話をします。

口から体の中に取り入れた水は
1吸収(消化管)→2分布(体液)→3排泄(尿や汗)や再吸収
という流れをたどり、体の中を巡っています。

この内のどこかの働きが上手く進まない状態、例えば、
吸収が上手にできない
運動不足などで体を動かせていないため、水も巡らない
尿や汗として体外に水をだすはたらきが上手く行われていないなど、
このような状態が続くと、余分な水は体に溜まりむくみなどがでてきます

その結果、天気の悪い日に頭が痛い、体が重だるいという不調につながっていきます。

取り入れた水分を自分に必要な水としてきちんと利用するために
胃腸の働きを高めることや、からだの水の流れをスムーズにしていくことが必要となります。

すぐにお薬でなくとも日常生活でも改善はできます。

食事の量を減らして胃腸の負担を減らす、
エレベーターをやめて、階段を使って体を動かしてみる
少しマッサージをして寝るなどを取り入れる
ということを日々ちょこちょこ意識してみてください。
どれか1つでかまいません、続けられることが大事になってきます。
続けていくことでじんわりと体の調子は上向きます。
これでうまくいくのがベストです。(お金がかかりません)

また、むくみやすい方は水分補給の際、水よりも
水のめぐりを促す民間のお茶を飲むこともおすすめです。
十薬(どくだみ)、スギナ、はとむぎ、とうもろこしのひげが余分な水をだしてくれます。
(写真は薬局でお出ししている季節のお茶です)

お茶や日々の生活ではイマイチ上向かないし、天気の悪い日ほんまにしんどいなという方には、
しっかり実感できる粉末の漢方薬
(☆おすすめポイント→生薬の粉末100%でできています!)があります。

血液がドロドロになるから、水分はちゃんと摂らないといけないので心がけて飲んでいます。
ときちんと意識されている方も多くいらっしゃいます。
さらに、その水分をしっかり巡らす体づくりを+αで日常に取り入れられると
より健康が維持できるので、ぜひ無理のない範囲で、しっかり体を動かしてください。

6/27~6/29 商品発送に関するお知らせ

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2019年6月18日(火)

G20大阪サミット開催に伴い、6月27日(木)~30日(日)の大阪市内の大規模な交通規制実施が予定されていますため、該当営業日は当薬局からの商品発送をお休みさせていただきます。
期間中も注文を承ることはできますが、期間中にいただいたご注文は7月2日(火)以降の発送とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

また期間中のお届けに関しても、地域によりお届け日やお時間の指定を承ることができない場合がございますので、ご留意くださいませ。

よろしくお願い申し上げます。

商品発送休止日:
6月27日(木)~29日(土)
※30日(日)は定休日です

老人必用養草3(寄り道)

香月牛山

2019年6月8日(土)

前回に引き続き、『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は、以前に紹介した『小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)』の香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになる本です。

なのですが、今回は何か所かを切り取り、「老人」や「年老いては」、「人」などの言葉を削って、通して見てみます。



【原文】

・ややもすればその心にかなはず、物毎に堪忍なりがたく、多欲にして怒り、うらみ、安穏にして楽しむことをしらず、さまざまの願望やむ時なき類の者おほし。
・脾気弱く、腸胃もすぼくなるによりて、常に食物を一度に食らふ事をえず。その上、虚火ありてかはく故に、飢る事もやすく、満る事もやすし。
・それ物の性の熱なるもの。炭火にてやきたるもの、気の辛く辣き物の甘しゅうなる物あたふべからず。
・紙袍は寒気を防ぎ、おもからずして便ある服なり。
・居所は南東をうけて陽気の方に向ふべし。
・万事におどろきやすし。ここを以て居所はその屋鋪の中央に作りて、四方より物躁き音などの聞えぬやうにすべし。
・常に目を楽しめて心を養うより外の事なければ、その家作も分限よりも清らかにすべし。
・居所の庭は広大なる仮山泉水を作るべからず。ひろき庭などを常に望めば眼をうばはれ、心散じて志気を耗す。しかのみならず、仮山は種々の物ずきをして、奇石などを立をくによりて、山にのぼり、石に踞て寒湿にあたり、あるひは足の弱き、蹶きこけ、腰をくじき、足を損ず。泉水ことに悪し。夏は暑気を凌に便あるに似たれども、水湿の気、皮膚をやぶり、冬は寒湿地中に満ちて、家の下まで湿気およびてさまたげおほし。
・春二月半ばより秋八月末までは、庭に出て草木の青みを見るときは、眼の病といふ事なく、眼性もつよきことなり。
・病後に舌をかく事なかれ。舌は心神の通ずる所なれば、そこなひやぶる時はたちまち命絶するなり。


【訳文】
・ともすると、思い通りにならず、何に対しても許せず、欲が多くて怒り、恨み、心やすらかにして楽しむことを知らず、様々な願望が絶えず起こるものが多い。
・胃腸が弱く細くなるので、食べ物を一度に食べることができない。その上、食欲の仮亢進があり、お腹が減りやすく、一杯にもなりやすい。
・熱いもの、炭火で焼いたもの、辛いもの、甘くて脂っこいものは与えてはいけない。
・紙の衣服は寒気を防ぎ、軽いので適した服である。
・住まいは南東の陽気が入る方に向いているのがよい。
・何事にも驚きやすいので、部屋は家の中央につくって、周りの騒がしい音などが聞こえないようにしなくてはいけない。
・いつも目を楽しませて心を養う以外にすることがないので、その家は身分よりもキレイにしなくてはいけない。
・庭は広大な山や泉を作ってはいけない。広い庭が常に前にあると、目を奪われ、心が散って、何かをやり遂げる気が減る。それだけでなく、山には趣向を凝らして、めずらしい石など置き、登っては石に座って寒気と湿気にあてられる、あるいは足が弱く、つまづいてこけて、腰をいためて足を怪我する。泉はとくに悪い。夏は暑さをしのぐのによいが、湿気が皮膚から入り、冬は冷えと湿気が地下に広がり、家の下まで湿気が及んで健康を害することが多い。
・春の2月半ばから秋の8月末までは、庭に出て草木の緑を見れば、眼の病気になる事がなく、眼の性質も強くなる。
・病後に舌を掻いてはいけない。舌は精神が通じる所なので、傷がつくとすぐに死んでしまう。


何か、ヒトではない生き物みたいです。
ちょっと、コメントを付けてみると

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この生物の飼い方には、いくつかコツや注意点があります。
わがままで、思い通りにならないと怒るので、なだめながら飼わないといけません。
食べられないのに食欲があったり、食べ物に制限があったりするので、体調に気を付けて、食べてもいいものを食べられる分だけ与えます。
家や庭にも配慮しないといけない点があって、怠ると怪我をしたり、体調を崩したりするので、飼い始めるときには、念入りに考える必要があります。
一番気を付けないといけないのは、舌を傷つけないことです。舌が傷つくとすぐに死んでしまうので、堅い食べ物などは十分注意しないといけません。長い間、愛情を注いで育ててきて、なついてきたのに、ちょっとした不注意で死なせてしまっては、悔やんでも悔やみきれません。
なかなか、扱いづらい生き物のように思えますよね。
でも、しっかりと特性を知れば、決して難しい生き物ではありませんので、みなさんも、ぜひ一度、飼ってみてもらえれば、その愛らしさがわかると思います。
―――――――――――――――――――――

イース文化でのヤプーの育成法や、モラヴィアのパパーロみたいですね。
老人の養生法の本からの抜粋とは思えなくなります。

理由の部分を省略したり、現代の考え方からは少し眉唾に思える所をつなげたりして、違った印象にして遊んでみましたが、
本当は有用なことがたくさん書いてある本なので、誤解のないようにお願いします。



では、次回は、普段の調子に戻って、養生法について真面目に紹介していきます。

6月8日(土) 臨時営業時間変更のお知らせ

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2019年5月23日(木)

誠に勝手ながら、6月8日(土)の営業時間を次の通り変更しますのでお知らせいたします。

営業時間 / 10:00 ~ 15:00

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。

生薬にまつわる「竹」

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2019年4月27日(土)

先日、ほりたて、ゆでたてのタケノコをいただきました。

水煮やごはんやさんでいただく調理されたかたちでは
みたことがありますが、丸々いただくのは初めてでした。

台所に立ち、
先っぽの方(色の濃い部分)が堅い!とか
たまねぎのように、どこまでもするする剥けてしまう、マトリョーシカや!と
ひとり突っ込みながら
タケノコの炊き込みご飯づくりに勤しんでいました。

さて、前置きのタケノコはこのくらいにして生薬の話に移ります。

残念ながらタケノコ自体は生薬に含まれていないので、
「竹」が名前に含まれている生薬をこの機会に調べてみました。
ざっと5つ紹介します。

「竹葉(チクヨウ)」「竹如(チクジョ)」「竹瀝(チクレキ)」「淡竹葉(タンチクヨウ)」「玉竹(ギョクチク)」

これらがすべて竹由来の素材で、同じ種類の竹なのかと思いきや
そうではありません。

「竹葉」「竹如」「竹瀝」はハチクという種類の竹であり、
「淡竹葉」はササクサです。
ただ、竹の種類はややこしく混同されることもあるようです。

また「玉竹」は竹とは関係なく、アマドコロという植物です。

(写真:左「竹如」真ん中下「玉竹」右「淡竹葉」)

竹由来の4つの素材の使われているところは、
「竹葉」「淡竹葉」は、名前の通り、葉っぱ。
「竹如」は幹の皮を薄くはいだその皮下の部分を薄く削りとったもの。
「竹瀝」は幹を加熱して流れ出た液汁。
とのこと。

竹の種類も決められていたり、使われる場所も様々です。

これら4つの素材のはたらきは
主になんらかの原因で体にこもった余計な熱を冷ますことです。

特に「竹如」「竹瀝」は熱を冷まし、
体に溜まってしまった不要なドロドロとした水(漢方でいう痰)を
とってくれると記載されています。

植物の由来が竹とは関係ない「玉竹」のはたらきは、
喉や肺をうるおす働きがあり、
喉の乾燥、乾燥からくる咳、喉痛に対して使用されるようです。

この前、なにげなく市販で購入した
トウモロコシをメインとしたお茶のパッケージに、このアマドコロの記載があり、
「こんなところに!」と驚きました。
このような発見があるので、みなさんも一度
商品の成分表示をみてみるのも面白いと思います。

以上、「竹」のつく生薬は、熱を冷ましてくれる素材でした。

そうこう調べているうちに、竹林へ涼みに行きたくなりました。
青々と茂る竹と爽やかな風吹くの中で深呼吸すると気持ちいいでしょうね・・・。

ではでは、明日からハレノヴァもGWのお休みをいただきます。
5/7(火)から通常営業します。
長いGWで外出する機会も増えると思いますが、薄手の上着をもって
紫外線と温度変化にうまくつきあって、気持ちの良い連休をお過ごしください。
また、連休明けにお会いしましょう。

老人必用養草2(飲食について:総論、肉)

香月牛山

2019年4月17日(水)

前回に引き続き、『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は、以前に紹介した『小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)』の香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は食養生の部分を読んでみます。

【原文】
・飯はよく熟して中心まで和かなるをくらふべし。こわきはあしく、ねばるはあしく、煖なるによろしく、冷るによろしからず。夏月といふとも冷たる飯をくらふ事なかれ。冬月といふとも熱飯を喰事なかれ。飯にむかはば、あらかじめ何ほど食んと心にて定めて其分量にすぐべからず。老人は一口の食もおほきときは、その気に堪がたく、消化しがたく、養ふものを以て、かへりて害をなすなり。能々心得べき事なり。
・(前略)『素問』にも「五穀は養をなし、五菜は充をなす」とあるも、此こころなるべし。然れば、肉と野菜の類は、食よりもすこしく食ふべきなり。聖人も「肉はおほしといへども食の気にかたしめず」とのたまふ。ことはりふかき事なり。
 年老ては肉食にあらざれば気血をます事なしとて、鳥獣の肉を好んで食ふ類の人おほし。これ其理にくらき故なり。世俗の肉をもてやしなふといふ事をつのるは、その味の口にかなふによりてその性をほめ、一時の心よきをとるのみなり。

【訳文】
・ご飯はよく火を通して中心まで柔らかいものを食べるのがよい。堅いものや粘るものは悪く、温かいのがよく、冷たいのはよくない。夏であっても冷えたご飯を食べてはいけない。冬であっても熱いご飯を食べてはいけない。食べるときは、あらかじめどれだけ食べるか決めて、それより多く食べてはいけない。老人は一口でも多く食べると、食べ物の気に堪えられず、消化できず、身体を養うものでかえって害を与えている。よく心得るべきことである。
・(前略)『素問』にも「五穀は体を養い、五菜は体を補う」とあるのも、これを言っている。なので、肉や野菜などは、主食よりも少なく食べるのがよい。聖人も「肉を多く食べても、主食の気より多くはしない。」と言っている。深い道理があることだ。
 歳をとってからは肉を食べないと気血を増すことができないと、鳥や獣の肉を好んで食べるような人が多い。これは養生の方法を知らないためである。世間で、肉によって体を養うと言うことが多いのは、味がよいためにその性質をほめて、一時の快楽をとっているだけである。


 食養生の部分を読んでいると、冷えているものはいけない、量は少ないのはいけないが、多くてもいけないと頻りに書いてあります。今の日本ではありがたいことに、食べ物が不足することはほとんどないので、食べ過ぎにはよく気を付けないといけません。口のいやしいのにまかせて、どんどん食べていると、いずれ体を壊してしまいます。老人は体が衰え、何をするにも体の負担になるので、このように再三諫めているという理由もありますが、若い方、働き盛りの方こそ気を付けていただきたいです。体はまだ丈夫ですが、丈夫な内から心がけることで、健康なまま歳をとることができます。
 肉や野菜は主食より少なく食べるのがよいというのも最もなことです。体を動かすエネルギーは穀物からとり、肉や野菜は体を調えるために食べるものと考えるべきです。糖尿病などでは炭水化物を制限するのもいいですが、糖尿病でない人が考えないといけないのは、炭水化物の量ではなく、お米、肉、野菜のバランスと全体の量です。
 歳を取ってからは肉を食べた方が体が衰えないと言われますが、肉を食べる気にならない、胃もたれする方が多くいらっしゃいます。肉を食べるから体が丈夫になるのではなく、肉が食べられるほど胃腸が強いから長生きするんです。胃腸が弱くなるのは、歳をとると仕方のないことなので、漢方薬で強くしてもらえたらと思います。


さて、今回見た食養生の部分は、もう少しあるので、残りは次回ご紹介します。
次回は麺、お酒、お茶、タバコのお話です。

老人必用養草1(養老の総論)

香月牛山

2019年4月2日(火)

今回は、『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は、以前に紹介した『小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)』の香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになる本です。

「巻一、養老」の総論の一部分を読んでみます。
原文のあとに、私が適当に訳したものを記します。


【原文】
人わかき時は血気さかんに元気つよきゆへ、保養の術にうとく、私欲を恣にすといへども、おほくは妨なきに似たり。四十にも至る頃ほひより、つとめて保養せざれば、たちまち病を生じ、元気をそこなひその身を失ふなり。(中略)生まれつきて元気さかんに体つよき人も、四十已後の保養をしらづ、私欲を恣にすれば、父母より受得たる所の天年をたもたずして、死する類多し。

【訳文】
若い時は血気が盛んで元気なので、養生の方法を学ばずに欲の赴くままに行動しても、多くは何もないように見える。40歳にもなると、養生に励まなければ、すぐに病気になり、元気を損なって体をこわす。(中略)生まれつき元気がよく、体が強い人でも、40歳を過ぎてからの養生を考えずに欲のままに行動すると、両親からもらった本来の寿命を全うせずに死ぬ人が多くいる。

やっぱり、もとから身体が強い人は、普段の生活で無理をして、かえって寿命が短いことが、昔からあったんですね。
一病息災という言葉は的を射ていると感じます。持病があったり、身体の弱い人の方が、ちゃんと健康を気遣って、歳をとるとかえって周りの人より元気というのは実際によくあることです。
「自分は長生きはしたくない」という方もいらっしゃいますが、養生を怠ると、健康寿命が短くなる場合が多いです。なかなか、やりたい放題の生活からからコロリとはいけないものですので、養生はしておいた方がいいと思います。


【原文】
父母の怒の起るは、其心ざしにたがふよりはじまる事なれば、いかようの筋なき事なりとも、まづそのあやまりをたださず、色を悦ばしうし、声をやはらげ、時いたりてすこしくいさめづとも、時は父母もよく心得て怒るにいたらざるなり。

【訳文】
老父母が起こるのは、心にそぐわないことから始まる事なので、どんなに道理の通らないことでも、まずは誤りを指摘せず、顔を穏やかに、声を和らげれば、時間が過ぎて少しもいさめなくても、老父母もよく理解して怒ることはない。

この部分は、周りの人の老人への接し方について書かれてますが、これは認知症の老人に対する接し方と同じです。声を荒げずに穏やかに話しかけることが大切なんですね。
老人は気血が減り、外からの刺激に弱くなっています。ちょっとしたことで怒りやすくなっていることを理解して、周りが少し配慮してあげることでどちらも過ごしやすくなります。
自分に対する忠告にもなりますが、年老いた親をないがしろにせずに、誠意をもって接しないといけないと改めて思いました。


この他にも、衣食住、精神の修養など、いろいろなことがかかれていて、興味深いところがたくさんあるので、これから、老人必用養草の気になった箇所を少しずつ紹介したいと思います。

ゴールデンウィークの休業日をお知らせします

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2019年3月20日(水)

漢方薬局ハレノヴァのゴールデンウィーク休業日をお知らせいたします。

ゴールデンウィーク休業期間:
2019年4月28日(日) ~ 2019年5月6日(月)

ゴールデンウィーク休業期間中は、メールでのお問い合わせは受け付けておりますが、
お返事は5月7日(火)以降となりますので、予めご了承くださいませ。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。

ホワイトデー

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ホワイトデーが近づきました。

ホワイトデーがなぜホワイトなのかはちょっと調べきれませんでした
(ご存知の方また教えてください)
ただはじまりとしては、バレンタインデーでチョコレートの贈物を受けた男姓が
お返しの意味を込めて、キャンディーを贈る日として飴菓子業界が策定した日だとか。

第1回は1980年。
今年でホワイトデーは32歳なんですね。

ホワイトつながりで「白」の漢方薬の話題です。

その漢方薬の中身がこちら(画像)です。

まっ白い生薬の正体は「セッコウ」です。

この漢方薬は、白虎湯(びゃっことう)といいます。

中国史や、ゲームがお好きな方は白虎ときいて
ピンと名前の由来が浮かぶと思います。

そうです、四神です。

西の白虎、五色の「白」。

実際にこの漢方薬も画像の通り、真っ白のセッコウが多量に含まれいます。
このことから白虎湯と命名されたのかもしれません。
(*できあがりの煎じ液は真っ白にはなりません。)

西洋薬の名前の由来も調べてみると色々考えられて、名付けられているものも多くあります。
例えば、痛み止めのカロナールは「痛みがとれ軽(かる)くなる」いう薬の効果から命名されたそうです。

他にも、この時期におなじみ、アレルギー性鼻炎に対して使われる「ザイザル」(Xyzal)があります。
この由来はアレルギー疾患に対する最終兵器との意味を込めて「XYZ」の文字を入れたのだそうです。
それだけ、アレルギーをいかに抑えるかに悩まされていたのかと思ったネーミングです。

また最近、私はCMでよく耳にする「ドリエル♪」は「dream well(良い眠り)」に由来しているとのこと。

漢方にせよ西洋薬にせよ、名前の由来を調べるのは楽しいです。

白虎のみならず、もちろん青龍、玄武が名前の由来の漢方薬はあります。
ご紹介はまた次回にでも。

最後話がそれましたが、ホワイトデーには忘れないようにお返しをしようと思います。

小児必用養育草3

2019.2.16

2019年2月15日(金)

さて、久しぶりに小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)を見てみます。
上の挿絵は、右がお食い初め、左がお宮参りの図です。
今回も本文には関係ありませんが、雰囲気を味わうために貼り付けておきます。


さて、今回紹介するのは、巻二の「生子養育の説」の一部です。
前回までは、あまり信用できない部分を紹介しましたが、
今回は現代でも役に立つ部分を紹介します。
原文に続いて、私が適当に訳した文を記します。


〈原文〉
 『保嬰論』に、「子を養育に十種の法あり。第一には、背を暖にせよ。二つには、腹を暖にせよ。三つには、足を暖にせよ。四つには、頭を涼しくせよ。五つには、胸を涼しくせよ。六つには、小児の驚きおそるるかたちの類を見する事なかれ。七つには、いまだ見しらぬ人を見せしむる事なかれ。八つには、啼事さだまらずして、乳を飲しむる事なかれ。九つには、軽粉、朱砂の類の石薬を飲ましむる事なかれ。十には、浴する事たびたびすべからず」と見えたり。

〈訳文〉
 『保嬰論』に、「子供を育てるのには十個のするべき事がある。一つ目は、背中を温かくすること。二つ目は、腹を温かくすること。三つ目、は足を暖かくすること。四つ目は、頭を涼しくすること。五つ目は、胸を涼しくすること。六つ目は、子供が驚き怖がるような見た目のものを見せないこと。七つ目は、見知らぬ人に合わせないこと。八つ目は、泣き止まない内は乳を与えないこと。九つ目は、軽粉、朱砂などの鉱物由来の薬を飲ませないこと。十は、湯浴みを何度もしないこと。」

 背中を温めるのは重要で、背中には膀胱経という気血の通り道があり、風邪(フウジャ)が入ってくる場所があります。風邪に侵されるとかぜになってしまうので、そこをしっかりと守るために、背中を温めるように言っています。
 頭を涼しくするのは、子供は陽(温めたり動かしたりするエネルギー)が盛んなので、大人より暑がりです。オーバーヒートしないように頭を冷やすということでしょう。


〈原文〉
 巣元方の説に、「初生の小児は、皮膚いまだ堅からず、衣を厚く重ねて温むべからず。温れば汗出やすし。汗出れは皮膚弱く成て、風を引やすきなり。常に衣を薄くすべし。背を冷やす事なかれ。衣を薄くする事は、初秋よりならはしむべし。漸々に寒くなるによりて、初秋より薄く仕馴て、次第次第に厚くして、冬にいたれは俄に寒きにいたらずして、寒に馴てよく堪るなり」といえり。心得べき事なり。

〈訳文〉
 巣元方という医師の説に、「生まれたばかりの子は、皮膚がまだ固くなく、厚着して温めてはいけない。温めると汗が出やすい。汗が出れば皮膚が弱くなり、かぜをひきやすくなるものだ。常に薄着にするのがよい。ただし、背中を冷やしてはいけない。薄着にするのは、秋の初めから慣れさせるのがよい。徐々に寒くなるにつれて、秋の初めから薄くすると馴れて、だんだんと厚くして冬になると、すぐに寒いとは思わなくなり、よく堪えられるようになる。」とある。心するべきことである。

 上でも話したように、子供は陽が多く、陰がすくないと言われています。つまり、体温が高くて活発に動くということです。体温が高いのに、厚着をするとすぐに汗をかいてしまいます。汗がでると、気も同時に出てしまいます。気は体の防御機能にも関わっているため、汗が出ることで、からだ表面の防御が弱くなり、かぜをひきやすくなります。
 では、冬はどうすればいいかというと、秋口から薄着に馴れさせていけばいいとあります。これは、大人も同じことで、秋口から薄着に馴れていくと、冬の寒さに強くなります。
ただし、冷え性で冬はいつも困っている方などは無理をせず、寒い時期は体を温めて気を付けて過ごしてください。

 古くからの子育て法には、現代ではしてはいけないことや、しても効果がないことなども含まれていますが、大切なこともたくさんあります。まだ科学的に証明できていないこともありますが、頭から否定せず、一度考えてみることが重要だと思います。

牡蠣は何と読みますか?

19.2.3blog

2019年2月2日(土)

最近、街の中を歩いていると「牡蠣」というのぼりが目につきました。
「牡蠣」という字は、目にした瞬間、「かき」とお読みになると思います。

しかし、私はどういうわけか、
「ボレイ」という読み方が、頭に浮かんできました。

生薬にだいぶ触れているせいかなぁとしみじみ思った今日この頃です。

今回はそんな「牡蠣」について。

牡蠣(かき)の身は、海のミルクと呼ばれるように、ミネラルなどが豊富で、
栄養たっぷりの冬の味覚の一つです。
ピンと張り詰めた、寒さが染み渡るこの時期ならではの食べ物ですね。

この牡蠣を「ボレイ」と読みますと、牡蠣(かき)の殻のことを指し、
生薬の1種として扱われます。

なぜ、他の貝ではなく、
牡蠣(かき)の殻を薬として目を付けたのかは、不思議なところです。
(ただ、貝殻はよく、土壌に撒いたりして使用されるので、
そういったところからも発想に至ったのかもしれないません。)

漢方の考えでは、ボレイは
「重鎮安神(じゅうちんあんじん)薬」に分類されます。
安神とは「心が落ち着いている状態」と考えてください。

漢方薬のなかにおいても、驚きやすい、不安、不眠を訴える方に
使用されるものに含まれてます。
昔々に、貝殻に上記のような力を見出したことには感心します。

あくまで個人的な想像を膨らませてみますと、

貝殻には、重さがあります。
漢方薬を作る際は砕かれているものを扱いますが、量をあつめると、
その手にずっしりとした重さを感じます。

このずっしりとした感覚が、「鎮める」につながり、
さらに、気持ちを平静な自分自身へ「落ち着かせる、冷静にさせる」ことになったのでしょうか。

よく眠たくなると、うつらうつらすると思います。
このとき、まぶたは下がりかけています。
まぶたが「重く」なるともいわれる状態です。

つまり、ずっしりとしたもので、まぶたを重くする→眠たくする

という発想かもしれないなぁとふと思いました。

その他では、胃酸過多に用いられる薬に含まれてもいます。
こちらの用いられ方はおそらく、殻の主成分が炭酸カルシウムであり、
それが胃酸を中和する働きをもつためだと考えられます。

普段は私たちの口の中には入らない、牡蠣の殻ですが、
食卓の話題の一つにもなる(?)ので
この殻が漢方薬として利用されているものなのだと思いつつ、
旬の牡蠣(かき)を召し上がってみてください。

召し上がる際は、くれぐれも、お腹をこわさないように気を付けてくださいね。

まだまだ寒い季節です。
風邪には油断なさらず、防寒などしっかり対策して
お過ごしください。

年末年始休業・臨時休業・営業時間変更(臨時)のお知らせ

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2018年12月19日(水)

漢方薬局ハレノヴァの年末年始休業日、臨時休業および12月28日(金)の営業時間変更をお知らせいたします。

年末年始休業期間:
平成30年12月29日(土) ~ 平成31年1月3日(木)

臨時休業日:平成31年1月12日(土)

営業時間変更日(臨時):平成30年12月28日(金)  10:00 ~ 13:00

年末年始休業期間および臨時休業日中、メールでのお問い合わせは受け付けておりますが、お返事は1月4日(金)以降となりますので、予めご了承くださいませ。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。

風邪薬に頼りすぎない冬に

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2018年11月22日(木)

最低気温が10℃を下回る日が増えてきましたね。
ゼロゼロ、ゴホゴホという人、マスク姿の人が多く見受けられます。

風邪は万病のもとというように、
風邪のみではなく、ひくことで体が弱ってしまうことも問題となります。

体調を壊すとデメリットがたくさんでてきます。
例えば、

物事がはかどらない
治りが遅くなりやすい
お薬代がかかる 
ご飯がおいしく食べられない

もちろん、人によって違いがあるでしょうが、いつもなにげなくできていることが、
うまくいかないことが多いと思います。

「時は金なり」といいます。
体調が思わしくない時、

15分で、できていたことが、なぜか30分かかっていた。
いつもしないようなミスをして、同じことを繰り返す羽目になり落ち込む。
覚えようとしたことがなかなか頭にはいってこない、イライラする。

このように
「時間」のロス、精神的にもマイナスにつながります。
余計なストレスもたまるかもしれません。

なる前に、ならないように予防することが、やはり、
普段のなにげない生活を気持ちよく過ごすためには大事だと感じます。

ハレノヴァでは

ウイルスに感染した時の頭痛、高熱に使用される生薬【板藍根】
を飲みやすく粉末にした商品がございます。

のどのイガイガ、痛みにもお使いいただけます。

また、オリジナルで板藍根をブレンドしたお茶もございます。
癖のある板藍根の味が抑えられ、飲みやすくなっております。

試飲もできます。
風邪をひかないように、ぜひ味見に来てください。

加えて、
手や足先、お腹を触ると冷たい、など冷えやすい方にはぜひおすすめなのが、
「蒸した」ショウガ100%の【赤乾姜】です。

お腹から全身をあたためてくれる商品です。料理にもお使いいただけます。

【赤乾姜】は「蒸してあること」がポイントで、蒸していない生姜と異なり、
体を中からあたためる成分が多く含まれます。

理想は、風邪をひいたら、家でゆっくりして、早く寝る。がベストなのですが、
仕事、家庭、勉強などと、そうもいってられない現代の生活です。

「お金」「時間」のロスをなくすためにも、
「風邪をひかないこと」「風邪薬にたよりすぎない」冬を過ごしてみませんか?

晩ご飯に
板藍根のお茶、赤乾姜いりのお味噌汁、赤乾姜の生姜焼き
どれかを一品加えて、翌日の健康に備える。

なんて
いいかもしれません。

小児必用養育草2

小児必用養育草2

2018年10月13日(土)

前回に引き続き、小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)を見てみます。
上の挿絵は、乳母が授乳しているところです。
本文には関係ありませんが、雰囲気を味わうために貼り付けておきます。

さて、今回紹介するのは、巻二の「生子養育の説」の一部です。
原文に続いて、適当に私が訳した文を記します。

〈原文〉
『千金論』に、「夏の時にいたらは、赤き絹にて袋をぬいて杏仁七つ、両方の尖りと皮とをさりて袋の内に入て、児の衣の領になり共、帯になり共くくりつけて置くべし。児雷の声を聞てもかつて驚事なし」と見えたり。日本にても常にする事なり。

〈私訳〉
『千金論』に、「夏になったら赤い絹で袋を縫い、杏仁七つの両方の先端と皮を去ってその袋の中に入れ、子どもの服の襟や帯にくくりつけて置くのがよい。こうすると、子どもが雷の声を聞いても驚かない」とある。日本でもよくなされることである。

私は小さいころ、雷が怖かったのですが、親が杏仁をくくりつけてくれなかったのでしょうね。
それをしてくれていたら、びくびくしなくて済んだのに。

さて、少し飛ばしてその続きです。

〈原文〉
(中略)すべて小児は心気うすく、物におびえやすければ、雷などの時は乳母の懐にしかと抱きて、驚かぬやうにすべきなり。かくいへば物に心えぬ愚なる人は、あまりに児を愛しすごし、少ばかりの雷の時も、はや驚きて蚊帳を釣、戸棚、長持のうちにかくすやうにするによりて、いよいよ児におそろしみをつけて、それをならつて性となりて長となりても、少の雷にも色を青くし、少の雷にも肝をひやして、夏の時、天くもりては人前には出る事ならぬ類の者多し。糾々たる武夫の家の小児などをかくそだてなす事は、さてさておろかなる事なるへし。能々心得べき事なり。

〈私訳〉
子どもというものは、驚きやすいので、雷などが鳴るときは、乳母の胸にしっかり抱いて、驚かないようにしないといけない。
こう言うと、何も考えない愚かな人は、子どもを過保護に扱い、少しの雷でも、すぐに驚いて蚊帳を釣って中に入れたり、戸棚や長持の中に隠れさせたりすることで、ますます子どもに恐怖を植え付け、それを繰り返して性格となり、大きくなっても少しの雷で顔が青ざめ、肝を冷やして、夏は空が曇ると人前に出る事もできないような者が多い。
れっきとした武家の子どもをこのように育てることは、何とも愚かな事である。よく心得るべきことだ。

雷が鳴るたびにすぐに戸棚や長持みたいな暗くて狭いところに押し込めてたら、そらトラウマになりますよ。
おそらく暗所恐怖症、閉所恐怖症も併発してるでしょう。
曇ると人前に出られないなんて、夏は出かけられないです。そこまでひどいと、夕立に会うと失神してしまいます。
これも、杏仁をちゃんとくくりつけてないからですよ。
これをお読みの方々は、子どもを持つ親戚、友人には杏仁七個を次の夏までに渡してください。