老人必用養草18(老人の疾病治療について3 便秘)

香月牛山

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は老人の便秘に関する部分の続きを抜粋して読んでみます。

【原文】
・老人は血気涸てうるほひなきにより、おほくは大便秘結の症多し。初老より中年の後までは、陰気をまして腎精をうるほす剤、六味八味の地黄丸、四物湯に桃仁、紅花など加へて服する時は、内気うるほひて秘結することなし。

・七十、八十に至りて大便秘結する人を治するには、補陰の剤によろしからず。ただ脾胃をうるほす剤を用るときは、秘結する事なし。補中益気湯に麻仁、桃仁酒、芍薬を加えて服すべし。その験、神のごとし。

・丹溪の母の秘結を患(うれゐ)られけるとき、始は新なる牛の乳、或は猪脂を糜粥(しろきかゆ)の中に入れて、進められけるに、しばらく通利せしか共、此味のシュウ(肉+戢)物を、ひたと用たるによりて、明年の夏の比、鬱滞して粘痰を生じ、脇腹に瘡を発して苦痛せしなり。ここにおゐて丹溪、後悔して一方を製して用られたり。「人参、白朮を以て君薬として、牛膝、芍薬を臣とし、陳皮、茯苓を佐として、春は川弓を加へ、夏は五味子、黄今、麦門冬を加え、秋冬は当帰を加え、生姜を倍し、一日に一貼、あるひは二貼を用て、大便通利快し」と『格致余論』に載せたり。
 『済世全書』には此方を載て、陳皮、山査子、甘草を加へたるなり。予、つねに老人の秘結を治するに、此方に砂仁、大棗、黄耆を加へて、これを用て其験を得たり。中年より耳順の後までの秘結には、此方に熟地黄を少ばかり加へて、其効、神のごとし。

・『千金方』に老人の秘結を治するに、人参湯といふ方あり。人参、麦門冬、乾姜、当帰、白茯苓、甘草、五味子、黄耆、芍薬、枳実、肉桂、半夏、大棗の十三味なり。丹溪も此方にもとづきて製せられたりと見えたり。此薬を用て効をとる事多し。

・老人の秘結を治するに、春の頃、杏花の半開を雨のふらざる日とりて、かげぼしにして、蜂蜜にひたして畜(たくわ)へ置。又は砂糖漬けにして、秘結の時、菓子に用れば、よく大便を通ずるなり。秘蔵の事なり。

【訳文】
・老人は血が少なくなり潤いがないため、便秘症となることが多い。初老から中年の後までは、陰を増やして腎精を補う剤、六味八味の地黄丸、四物湯に桃仁、紅花などを加えて服用すれば、体内が潤って便秘となることがない。

・70歳、80歳になって便秘する人を治すには、補陰の剤ではよくない。ただ脾胃を潤す方剤を用いれば、便秘をすることがない。補中益気湯に、麻子仁、桃仁酒、芍薬を加えて服すべし。その効果は神のごとくである。

・朱丹溪の母が、便秘を患われたとき、初めは新鮮な牛乳、あるいは豚脂を粥に入れて食べていたが、しばらく通じがあったものの、この脂っこいものをずっと食べていたため、次の年の夏ごろ、鬱滞して粘痰を生じ、脇腹にできものができて、苦しく痛んだ。そこで丹溪は、後悔してひとつの方剤を作って用いられた。「人参、白朮を君薬とし、牛膝、芍薬を臣薬とし、陳皮、茯苓を佐として、春は川弓を加え、夏は五味子、黄今、麦門冬を加え、秋冬は当帰を加え、生姜を倍にし、1日に1貼、あるいは2貼を用て、大便が気持ちよく通利した」と『格致余論』の載せている。
 『済世全書』にはこの方剤を載せて、陳皮、山査子、甘草を加えている。私は常々老人の便秘を治療するに、この方剤に砂仁、大棗、黄耆を加えて、これを用いて効果を得ている。50歳から60歳過ぎの便秘には、この方剤に熟地黄を少しだけ加えると、その効果は神のごとくである。

・『千金方』には老人の便秘を治療するのに、人参湯という方剤がある。人参、麦門冬、乾姜、当帰、白茯苓、甘草、五味子、黄耆、芍薬、枳実、肉桂、半夏、大棗の十三味である。朱丹溪もこの方剤に基づいて作ったとある。この薬を用いて効果を得ることも多い。

・老人の便秘を治療するのに、春の頃、杏の花が半分開いているのを雨が降らない日にとって、陰干しにして、蜂蜜に浸して蓄えておく、または砂糖漬けにして、便秘の時、菓子として食べれば、よく大便を通じる。言わずに隠している事である。

次は、老人の痰と頻尿についてです。

※文字化け防止のために「艸+弓」を「弓」、「艸+今」を「今」に置き換えています。

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老人必用養草18(老人の疾病治療について3 便秘)

香月牛山

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は老人の便秘に関する部分の続きを抜粋して読んでみます。

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胃の不調

40代女性
主訴:胃の不調

現病歴:
 最近、胃の調子が悪い。やや吐き気(+)。ストレス多い。みぞおちの痛み(+)。

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顔の赤み

50代男性
主訴:顔の赤み

現病歴:
 1年前に、赤みがこめかみから始まり、今は頬まで広がっている。皮膚科でステロイド処方された。ストロイドを間違った使い方をして赤みが広がった。診断はステロイド性酒さ。別の塗り薬を処方された。
 顔が熱っぽい。濡れたタオルを当てている。痒み(+)。前は寝るときも痒かったが、今は薬で↓。風呂、朝、お酒で悪化。改善は特になし。

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ゴールデンウィーク営業日(2025)のお知らせ

8月のたぬき

ゴールデンウィークはカレンダー通りに営業いたします。

休業日:2025年4月27日(日)、29日(火)、5月3日(日)~6日(火)
営業日:2025年4月28日(月)、4月30日(水)~5月2日(金)

期間中、メールでのお問い合わせは受け付けておりますが、お返事は翌営業日以降となります。
また、休業日はオンラインショップの発送業務も停止いたしますので、予めご了承ください。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願い申し上げます。

花粉症・鼻炎にはクマザサがおすすめ(インペアードパフォーマンス予防に)

クマザサ6

「インペアードパフォーマンス」という言葉をご存じですか。
自覚しないうちに、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬によって、頭の働きが落ちている状態です。
古くからある抗ヒスタミン薬は、効きがいいのですが、その分、脳の覚醒度も落としてしまいます。例えば、d-クロルフェニラミン2㎎を服用すると、ウイスキーのハーフショットを飲んだのと同じくらいパフォーマンスが落ちると言われています。
比較的新しい抗アレルギー薬は、そこまでではありませんが、多かれ少なかれ影響があります。

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胸部の締め付け感

50代女性
主訴:胸が苦しい

現病歴:
 数年前からストレスが増え、初めは起床後に胸に不快感があった。その後、のどの痞えが生じて、去年からはのどの締め付け感もある。現在は、のどから胸にかけて苦しく、こわばっている。呼吸もしづらい。
 西洋薬、漢方薬(半夏厚朴湯、加味逍遙散、香蘇散などその他多種)をいろいろと試したが改善せず、悪化している。
 ストレス時に顕著に悪化する。体のストレッチをすると軽減する。

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私は花粉症への道をどれくらい進んでいるのだろう

クマザサ6

今年も嫌な花粉の季節が始まりました。
私は花粉症ではないのですが、いつ発症するかびくびくしながら、毎年過ごしています。

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子宮筋腫

40代女性
主訴:子宮筋腫

現病歴:
 多発性子宮筋腫。大きなものは触るとわかる。圧迫感、腹脹がある。
 手術を勧められたが断った。ホルモン剤は副作用で中止。

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下痢と腹痛

60代女性
主訴:下痢と腹痛

現病歴:
 初冬。原因はわからないが、今月2回下痢をした。その後、便秘、兎糞状、残便感あり、便意があるが出ない。今までも疲れて下痢をして、その後便秘することがあった。腹痛なし、4日出ていないが、腹脹や腹満なし。左腹部不快感。腸蠕動亢進なし。腹鳴なし。吐き気なし。ガスが出るが、出ても楽にならない。お風呂に入っても楽にならない。

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親知らず抜歯後の痛み

20代女性
主訴:抜歯後の痛み

現病歴:7日前に親知らずの抜歯をした。数日してから痛みが出だした。今日はずっと痛い。痛み止めを飲むと、少し楽になる。抗菌薬は処方されていない。

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年末年始休業日のお知らせ(2024~25年)

2015門松

2024.12.2(月)

漢方薬局ハレノヴァの年末年始休業日をお知らせいたします。

年末年始休業期間:2024年12月29日(日)~2023年1月5日(日)

期間中、メールでのお問い合わせは受け付けておりますが、お返事は2023年1月6日(月)以降となります。
また、休業期間中はオンラインショップの発送業務も停止いたしますので、予めご了承ください。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願い申し上げます。

頭がぼーっとする

20代女性
主訴:頭がぼーっとする

現病歴:
 昨日から、頭がぼーっとする。今日は特にひどい。頭に熱感がある。少し頭痛がある。
 

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アトピー性皮膚炎について②

アトピーの治療で「本当は冷えによって起こっている」「身体の内側は冷えているから温めないといけない」が、好きな人が多いなあと思います。
熱症状と思える炎症が、実際は冷えで起こっているのだと言うと、逆説的で、それが今までの考え方をひっくり返してくれて、袋小路に入り込んだ思考に新たな抜け道を与えてくれるようで、飛びつきたくなるのでしょうか。
治療者も、患者も心地いいのかもしれません。
ただ、冷えが悪いのは、そこから巡りが悪くなるからであって、炎症がある直接(根本ではなく)の原因は気血津液の滞りだと考えます。
いずれは温める薬が必要であったとしても、今の肌の状態を考慮しないといけません。

少なくとも炎症が強い時は、強く温める生薬を使わない方が、無難です。どうしてもという時に、いろいろと組み合わせながら、慎重に使います。
局所の熱症状がある時に、強く温める薬を使うと、大体、悪化してるように感じます。
体が冷えている場合、熱症状がある程度取れてから、少しずつ温めていくのが一番良いのではないかと思います。

※文字化け防止のために「艸+弓」を「弓」に置き換えています。

めまい

20代女性
主訴:めまい

現病歴:
 1年前からめまいがあり、最近は頻繁にある。昼に症状強く、夜はマシ。生理中に症状強い。生理前から期間中はずっとある。動けなくなることもある。寝不足で悪化し、動悸も伴う。曇天時悪化し、体のだるさも伴う。季節での変化(-)。季節の変わり目(+)。空腹時とその後食べた時にも悪化。グルグルしためまいと血の気がひくめまいどちらもある。
 

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うつ症状

50代男性
主訴:うつ症状

現病歴:
 経営者。数か月前から、仕事のやる気が減った。以前は、仕事が重なっても、やる気があったが、今はスケジュールを見て、ため息をついたり、これから得意先との大事な話があるというときにしんどくなったりする。自分では、軽いうつなのではないかと思う。
 

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