2018年9月29日(土)
前回(18.9.22)の話の続きとなります。
ご紹介させていただいた、秋の七草の内、5つが漢方薬の原料である生薬としても使用されています。
くず、なでしこ、おみなえし、ふじばかま、あさがお(キキョウ)です。
では、くずからみていきましょう。
○葛(くず)/葛根(カッコン)
使用部位:根
解表(発汗させることで、風邪などの症状を緩和する)薬の1つ
熱を冷ます、筋肉のけいれんをゆるめる作用があります。葛根湯は、首筋の後ろのこりや、こわばりがある時に使用する。というのが指標の1つとしてありますが、その理由はこの葛根の作用と考えられます。民間療法でも使用され、風邪のひきはじめなどに、くずゆをお飲みになったことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
○撫子(なでしこ)/瞿麦(クバク)
使用部位:花が咲く時期の地上部
利水滲湿薬(体の水の流れをよくして、水湿を除く)の1つ
湿熱を除き、尿の出をよくする作用や、また血(体の中の血が滞った状態)をとる作用もあり、無月経の治療に用いられることもあります。
瞿麦の「瞿」という漢字が珍しいので調べてみました。
瞿:上部の二つの目が見はって警戒する、下部の字(はやぶさ)を加えて、猛鳥が見張るさまを表している。
意味:1.みる、タカなどの猛鳥がきょろきょろ見回す 2.ほこ、刃先が4つある武器
とのことです。
○女郎花(おみなえし)/敗醤(ハイショウ)
使用部位:根を付けた全草
清熱薬(体の様々な要因より生じた熱をさます薬)の1つ
炎症を抑え、また解毒、膿を取り除く作用があるといわれています。
敗醤とは:
植物全体に、醤(味噌など、どろどろに発酵させた食品)が腐ったような臭気があるところから名付けられたようです。
○藤袴(ふじばかま)/佩蘭(ハイラン)
使用部位:全草
暑薬(暑さによる諸症状(ほてり、熱感など)を取り除く薬)の1つ
暑さや湿気による発熱や、食欲の低下などに使用されます。香りによって、胃腸を元気にし、口臭や口がねばねばするなどの症状に対する良薬とされています。
なぜ蘭がつくのか?
「蘭」の字は古くは芳香のある植物をさしたそうです。新鮮な葉をもむと、さわやかな香りがあり、乾燥させるとさらに強い桜餅に似た芳香を放つようになるようです(まだわたしは試したことがありません)
あまり目にしない「佩」という漢字について
はい:人と、巾(帯)と凡(服)からなり、人の帯につけた飾り玉、ひいては帯びる意味を表す。
意味:1.おびだま 2.帯びる、はく 3.こころにとどめて忘れない
○桔梗(キキョウ)
使用部位:根
化痰止咳平嘔薬(痰をのぞき、咳をとめる薬)の1つ
のどの通りをよくし、痰を除き、咳を止めるため、咳、痰、のどの痛みなどにもちいられます。
ちなみに朝顔も生薬として用いられています……
○朝貌(あさがお)/牽牛子(ケンゴシ)
種子を使います。便秘に用いる、下剤の一つとして紹介されています。少用では大便を通じさせ、多用すると水のような排泄をひきおこすと書かれていることから、なかなか作用は強いようです。
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一部の生薬の写真です。
左上から、葛根、瞿麦、牽牛子、そして右下が桔梗です。
以上で紹介を終わります。
秋の七草は観ても美しい、人の身体の薬にもなることがわかりました。
1年のうち、この時期ならではの「秋」を季節の草花で目を、食で口を…と、五感で満喫しつつ、冬に備えていきたいですね。