50代女性
主訴:左目が完全に閉じることができず、口元がゆがんでいる
現病歴:5日ほど前から左右の眉の位置がずれているように感じていた。その後、ビールがいつものように美味しくない。1日前から左目が閉じられない、口元がゆがむ、飲み物や食べたものがこぼれる、上手く話せないなどの症状が出てきた。
右関脈滑、有力。舌中央に黄苔。尋ねると、最近食べ過ぎているかもしれないという。また、ここ最近、疲れの為に補中益気湯を服用していると。
食べ過ぎによって生じた脾胃の痰濁が内風によって頭部へ上がり、経絡を阻滞した。服用していた補中益気湯の昇提作用は内風を助長していると思われる。
痰濁上擾を助長しないように補中益気湯を中止し、熄風・清熱化痰の煎じ薬に加えて、開竅熄風作用の強い安宮牛黄丸を元にした製剤を1日1丸、1回1/8丸を口の中でゆっくり溶かすように飲んでもらうことにした。牛黄清心元は1/2丸を1日2回服用するより、1/8丸を1日8回服用してもらう方が効果が高いことから8回に分けてもらった。
2日後、病院で検査し、重度の顔面麻痺と診断され、ステロイドのパルス療法を開始。プレドニゾロンを処方され、4日間服用した。
その後、徐々にマヒが少なくなった。10日後の受診では、回復が早いことと、重度のマヒがしっかり回復していることに医師が驚いていたとのこと。
さらに1週間煎じ薬を服用し、全く後遺症なく回復した。
所感:熱閉と呼ばれる、熱による意識障害などに使われる廣東牛黄清心元を用いた。開竅作用のある牛黄、竜脳、麝香と熄風作用のある羚羊角が含まれ、閉証には抜群の効果がある。煎じ薬も相まって、かなり効果が高かったと思われる。
ただ、上記のように、自分で原因がわからず、かえって治癒を妨げるようなことをしている場合もあるので注意。
顔面マヒ以外にも、脳梗塞や脳出血で倒れたときにマヒなどの後遺症を残さないために重要な薬。