生理痛について

生理痛がある方の割合はどれくらいかご存知ですか。ひどい生理痛がある方が3割程度、軽い生理痛や時々ある方を含めると、8割近くの方が生理痛を経験しています。
今では、生理痛はあるのが“普通”になってしまっていますが、本来はないものです。
生理痛があるのは、心や体のバランスが崩れている徴候と考えることができます。
漢方の考え方では、生理痛をどう判断するのか、お話しします。

芍薬

あなたの生理痛は生理前~生理中に強いでしょうか、それとも、生理中~生理後に強いでしょうか。
生理前から生理中に痛む方は、気血の渋滞によって起こっている可能性が高いです。痛い時にお腹をさすると気持ち悪い、経血が出ると楽になるのも特徴です。
生理は、ひとことで言うと、子宮に血が溜まってドッと出る現象です。
ドッと出るまでに痛いというのは、溜まっているときに痛い、つまり渋滞による痛みです。
この場合、血の流れをよくする薬を使いますが、同時に、血の流れが悪くなっている原因も考えます。
血を動かすエネルギー不足?
血を動かすエネルギーがうまく供給されない?
血の通り道を邪魔しているものがある?
全身的な血の不足から子宮付近だけで血の流れが悪くなっている?
体が冷えて血の流れが悪くなっている?
体に不要な熱が溜まって血が煮詰められて流れが悪くなっている?
血の渋滞の原因を考えると、いろいろありすぎて、なかなか難しいです。
この原因を考えることで、根本治療にぐっと近づきます。
「ぐっと近づく」と表現したのは、まだ更にその原因があるからです。それに関しては後ほど申し上げます。

生理中から生理後に痛む方は、気血の不足によって起こっている可能性が高いです。痛い時にお腹をさすると気持ちよい、経血が出てから痛みが強くなるのも特徴です。
先に、生理は子宮に血が溜まってドッと出る現象とお話ししましたが、このタイプでは、血が不足しているために、経血として血が出ていくと、さらに血が不足して、子宮が“栄養不足”となって痛みが出てきます。
血が不足しているのであれば、血を補充する薬を使えばいい、だけのように感じますが、ここでもその原因を考えます。
胃腸が弱くて食べた物をちゃんと消化吸収できていない?
食べたものから血を作り出す機能が低下している?
大きな病気や手術の後、出産後で気血を消耗している?
血にもなる精(≒生命力)がもともと少ない?もしくは消費が多い?
体が冷えて全身的に機能が衰えている?
これまた、血の不足の原因を考えると、なかなか難しい。
でも、根本治療のためには考えないといけません。

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症状が起こるメカニズムを考えた次は、その原因を探ります。
生理痛は心や体のバランスの崩れと表現しましたが、生物は、何もないのに異常を起こすことは稀です。(通常の生命活動のエラーであっても、エラーの確率を上げる要因が積み重なっていることが多々あります)
「生活」と「体質」が元の元の原因です。
「生活」とは、食事量の過不足、食事内容、水分の摂り方、生活環境や職場環境、精神的ストレス、気候、運動不足、たばこやお酒など、日常に関すること。
「体質」とは、生まれつきの体質や、長年の生活でつくられてしまった体質など、体の持つ特徴に関すること。
この2つを改善することが再発予防、根本治療に欠かせません。

例えば、ストレスが強ければ、気(≒エネルギー;気分の気)の流れが悪くなり、気を原動力として動く血も流れが悪くなります。
運動不足では、全身の気血の流れが悪くなるほか、熱を生みだすことができないので、冷えにもつながります。
自分の体には合っていないにも関わらず、体にいいと考えて水をよく飲んでいると、不要な水が溜まり、血管を圧迫して血の流れを悪くしたり、胃腸に負担をかけて消化吸収を邪魔したりします。

ただ、漢方の視点からアドバイスを差し上げて、生活を変えても、すぐに結果が出ないこともあるため、症状を起こすものを素早く取り除く、症状を鎮めるものを素早く補充するために漢方薬を使います。
体質に関しては、生活の改善からでは長い時間が必要なため、特に漢方薬が重要になります。

このような様々なことを判断するため、初めてお越しになった方には、じっくり時間をかけてお話しをお聞きして、その後、体の状態を改善するためのポイントをお話しします。
多くの方に、自分の体がどうなっているのか、普段どんなことをすればよいのかを知ってもらい、ご自身で体調を整えることができればと思っています。

※文字化け防止のために、「病だれ+於」を「於」に、置き換えています。

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病気になりにくい体・再発しにくい体について③(邪への対処)

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前回、正気を強くするためにはどのような方法があるかお話ししました。
では、邪を防ぐ、邪の発生を予防するにはどうすればよいでしょうか。
邪を細菌やウイルスとする場合、気候や環境とする場合、気血水の滞りとする場合に分けて考えてみます。

邪を細菌やウイルスとする場合、邪を防ぐには、単純に感染ルートを遮断すればよいだけです。かぜやインフルエンザなどは、うがい、手洗い、マスク。ノロウイルス感染症などは吐瀉物や排泄物の適切な処理。サルモネラやカンピロバクターなどは、食物の加熱調理などが有効です。

邪を気候や環境とする場合、環境に対応することと、体の内に気候の邪と同じものを溜めないことが重要です。環境に対応するというのは、猛暑であればクーラーをつける、水浴びをするなど、酷寒であればストーブをつける、温かいものを食べるなど、普段からしていることです。
体の内に邪と同じものを溜めないというのは、西洋医学にはない考え方です。
例えば、雨の降る前や曇りの日に体がだるくなったり、頭が痛くなったり、関節が痛くなる人は、体の内に湿が溜まっています(次に言う水と同じと考えていいのですが、ここでは便宜上こう呼んでおきます)。雨の前や曇りの日には、湿気の邪である湿邪が多くなりますが、体の外にある湿邪に対して、体の内にある湿が反応してしまい、湿の症状が出てしまいます(体の内にある湿に、体の外にある湿が加わって症状が出るという考えでもよいかと思います)。
こういった方は、湿を溜めない食事や生活習慣が必要です。湿を溜めてしまう甘いものを極力少なくする、体を動かして汗や尿として湿を追い出すなど、内の湿を少なくしていけば、気候による影響も少なくなります。

邪を気血水の停滞とする場合、気血水それぞれによって対応が違います。
気の停滞(気滞)は、精神的ストレスや運動不足によって起こることが多いです。ストレスをうまく発散したり、全身運動をすることで、気の巡りをよくすることが重要です。
血の停滞(於血)は、様々な原因で起こりますが、中でも、気滞によって起こったり、冷え、食事などが原因になって起こることが多いと感じます。気滞と同じ対処法をしたり、体が冷えている人は体をこまめに動かして温める、食事が乱れている人は脂っこい食事を減らす、食べ過ぎないようにするなどが有効です。
水の停滞(水滞、水毒)は、気滞や於血から起こったり、水はけの悪い体なのに水をゴクゴク飲んでいたり、水をうまく体から出せていないことが多いです。夏場の高齢者以外は、体の欲求以上に水をのむ必要はないので、のどが渇いたときに、のどの渇きが癒える分だけ水を飲むことが大事です。また、すでに述べた通り、甘いものを減らしたり、体を動かすようにすると、体の中の余分な水が出ていきます。

邪>正気となると病気になるという所から、邪への対処法をお話ししました。
次は、以前にも少し触れましたが、漢方薬にも、治療のための薬、健康を保つのための薬があることをお話しします。
(つづく)

当店では、「症状を改善したい」だけではなく、「体を丈夫にしたい」「病気を再発させたくない」「健康寿命を延ばしたい」といったご相談も承っています。
直接、ご来店くださっても構いませんが、より正確な判断をご希望の場合は、ご予約の上、30分~1時間ほどお時間を頂戴して、お話をお聞かせいただければ幸いです。

病気になりにくい体・再発しにくい体について②(正気を強くする)

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前回、病気にならないためには、正気を強くするか、邪の侵入を防いだり、邪を体に溜め込まないようにするかどちらかという話をしました。
では、正気を強くするにはどうすればよいか。
正気を強くするには、正しい食事と睡眠をとる、治療のための薬ではなく保健のための薬を飲む、体の熱や冷えのバランスを整える、五臓(肺心脾肝腎)のバランスを整えるなどが必要です。

正しい食事と睡眠、これは基本的なことですが、一番大事なところです。
人は生まれてから死ぬまで、ずっと、生まれ持った精(生命力)に加えて、食事と呼吸で精を補充して生きていきます。いずれは精がなくなり、亡くなることになりますが、睡眠が少ないと、精を浪費してしまいます。精から正気が作られて体が正常に働きますが、食事や睡眠を正しくすることで、正気を強くすることができます。

治療のための薬ではなく保健のための薬を飲むというのは、症状に対する薬ではなく、体の根本を強くする薬を飲むということです。
西洋薬は対症療法、漢方薬は体質改善に効くと思ってらっしゃる方も多いと思いますが、漢方薬にも、症状を取るだけの薬、症状の裏側にある体の状態を整える薬、上述の精を補うなどして根本を強くする薬などがあります。
体の根本を強くする薬は、ほとんどの場合、今出ている症状を取ることはあまりできませんが、少量を続けて服用することで、数年後、10年後、20年後の体を変えていくものです。
正気を作り出す基礎を高めて、邪に負けない体を作るものです。

体の熱や冷えのバランスを整える、五臓を整えるのも、正気を強くするのに重要です。
体に熱が多すぎる時には全身運動などで熱を追い出したり、脂っこい食事や甘いものを控えめにします。冷えている場合は、これも運動などで体の熱を作り出す助けをしたり、体を温めるものを積極的に摂ったりします。
五臓(肺心脾肝腎)のどこかに弱点があれば、そこから邪が侵入したり、そこに邪が発生したりしてしまいます。ここでは詳しく書けませんが、薬や生活習慣で弱点を補い、バランスを整えることで、正気を高めることができます。

正気>邪なら病気にならないため、正気を強くするお話をしましたが、邪を防ぐ、邪を生み出さないようにするにはどうすればよいでしょうか。
(つづく)

当店では、「症状を改善したい」だけではなく、「体を丈夫にしたい」「病気を再発させたくない」「健康寿命を延ばしたい」といったご相談も承っています。
直接、ご来店くださっても構いませんが、より正確な判断をご希望の場合は、ご予約の上、30分~1時間ほどお時間を頂戴して、お話をお聞かせいただければ幸いです。

病気になりにくい体・再発しにくい体について①(正気と邪)

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病気になりたくないのは、全ての方に共通する思いだと思います。
(病気になりたいという方は、深淵な哲学をお持ちの方か、探究心を窮めた狂気じみた方か、芯の図太い徹底した天邪鬼だと思います。)
では、病気になりにくい体、病気が再発しにくい体を目指すためにはどうすればよいでしょうか。
漢方の視点、治療薬、保健薬、生活習慣、心、いろいろな面からどうすればよいかを考え、何回かに分けてお話ししていこうと思います。

まず、病気になるのはなぜか。
それは、邪が正気より強くなるからです。
正気とは、自分の体のもつ、体の恒常性を保つための力です。免疫、肝臓の解毒機能、腎臓の排泄機能など、ありとあらゆる体の機能を指します。
邪とは、外界から体を侵すものですが、少し広くとり、体の中にできてしまった邪魔なものも含みます。細菌、ウイルス、曇天や猛暑などの気候、炎症を引き起こすサイトカイン、むくみとして現れる細胞間の水、腫瘍など、体の働きを邪魔するものや、苦痛を引き起こすものを指します。
正気が充実して邪が弱い状態、正気>邪なら、病気にはなりません。邪が体外へ排出されたり、体内で消除されたりして、体は元の状態に戻ります。これが逆転して、正気<邪となると、病気になります。
ただ、病気になる下準備が出来上がっても、症状が出るまでには時間がかかることもあります。体の部位の違い、個人の感じ方、体力の差によって、症状として現れるまでに差があります。

つまり、病気にならないためには、正気を強くするか、邪の侵入を防いだり、邪を体に溜め込まないようにするかどちらかということです。
(つづく)

当店では、「症状を改善したい」だけではなく、「体を丈夫にしたい」「病気を再発させたくない」「健康寿命を延ばしたい」といったご相談も承っています。
直接、ご来店くださっても構いませんが、より正確な判断をご希望の場合は、ご予約の上、30分~1時間ほどお時間を頂戴して、お話をお聞かせいただければ幸いです。

夏季休業期間のお知らせ(2023)

8月のたぬき

2023年8月10日(木)

漢方薬局ハレノヴァの夏期休業期間をお知らせいたします。

夏期休業期間:8月11日(金)~8月16日(水)

休業日もメールでのお問い合わせは受け付けておりますが、お返事は翌営業日以降となります。
また、オンラインショップの発送業務も停止いたしますので、予めご了承ください。

ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いいたします。

瓊玉膏について⑥(更年期)

更年期の悩みは、パートナーの方など周りに理解されないことも多く、一人で抱え込んでしまうこともあります。
現在は、更年期症状が出る年齢が早まっている方も少なからずいらっしゃって、そういった方は、世間一般にいう更年期の年齢ではないため、一層、理解を得られにくくなっています。

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車酔いからくる手足のしびれ

40代女性
主訴:車酔い・手足のしびれ

現病歴:
 前日バスで酔った。以前からあるが、車酔いで胃の違和感、胃のしびれが出て、その後、手足がしびれ、体が硬直して動かなくなる。
 明日から車を運転して、出かける予定なので、何とかしたい。
 今日は食べられるがムカムカしている。頭に霞がかかったよう。手足の冷え(-)。喜冷飲。ムカムカと頭の症状同程度。

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こむら返り・便秘

70代男性
主訴:#1こむら返り・#2便秘

現病歴:
#1ゴルフをしていると後半に足がつる。芍薬甘草湯を飲んで、以前は効いていたが、効かなくなった。夏もつる。つりやすい時間帯はない。足に毛布をくるんで寝ると多少マシ。
#2直腸がん切除後から排便障害あり。酸化マグネシウムで便通がある。ビオフェルミンも服用。できれば西洋の薬は飲みたくない。出が悪く、ガスも溜まる。便秘で胸が悪くなる。

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回春仙について③(気付け)

回春仙は、13種類の生薬を配合し、心臓の症状以外にも応用できる漢方薬です。
1丸が小さいため服用しやすく、瓶も小さいので持ち運びやすいのが特徴です。
症状があるときに服用する、頓服薬としてとても便利な漢方薬です。
今回は、気付けに対する効果についてお話します。
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過敏性腸症候群(IBS)について

過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や便通の異常があり、数ヶ月にわたって慢性的に続く病気です。
人によって、便秘だけ、下痢だけが続いたり、便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。
症状が強いと、電車に長時間乗れず、トイレがない車両だと不安だったり、緊張する場面になるとすぐにお腹が痛くなり、トイレに何度も駆け込むなど、生活に支障をきたすこともあります。
漢方では、どう考えて薬を決めていくのか、次にご紹介します。
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回春仙について②(やる気の低下・頭がぼーっとする)

回春仙は、13種類の生薬を配合しており、気(≒エネルギー)や陰(機能亢進過剰を抑えるもの)などをバランスよく補充できる漢方薬です。
1丸が小さいため服用しやすく、瓶も小さいので持ち運びやすいのが特徴です。
症状があるときに服用する、頓服薬としてとても便利な漢方薬です。
今回は、やる気の低下・頭がぼーっとするのを改善するはたらきについてお話します。
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回春仙について①(動悸・息切れ)

回春仙は、13種類の生薬を配合しており、気(≒エネルギー)や陰(≒機能の亢進しすぎを抑えるもの)などをバランスよく補充できる漢方薬です。
1丸が小さいため服用しやすく、瓶も小さいので持ち運びやすいのが特徴です。
症状があるときに服用する、頓服薬としてとても便利な漢方薬です。
今回は、動悸・息切れに対する効果についてお話します。
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廣東牛黄清心元について④(動悸・不安に対して)

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まず、ご注意いただきたいのが、牛黄清心元(ごおうせいしんがん)は、様々なメーカーが製造していて、内容が違うことです。含まれる生薬が違うと、使い方も違います。
廣東牛黄清心元(かんとんごおうせいしんがん;以下、清心元)について、今回は高熱やのぼせに対する効果を説明いたします。


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ゴールデンウィーク営業日のお知らせ

15042201

2023.4.28(金)

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呑気症

50代女性
主訴:呑気症(と自身で判断)

現病歴:お腹全体が脹って仕方がない。げっぷもガスも良く出る。クリニックで数か月間、漢方薬をもらっているが治らない。自分では呑気症だと思う。ストレスが原因と感じる。

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経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)の副作用防止

60代女性
主訴:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)の副作用防止

現病歴:
 2か月ほど前に突然血尿が出て病院受診。早期がんの疑い。2週間後に上記の手術を受けた。筋層まで切除したため、術後は激痛だった。これから、BCG注入療法をするが、膀胱炎など副作用が起きないようにしたい。
 現在、日中は2時間ごとにトイレ、夜間も3時間ごとにトイレへいく(以前は昼は3時間ごと、夜は6時間以上起きなかった)。排尿痛は少し。血尿は見た目にはないが、尿検査で潜血(2+)。残尿感(-)。
 

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