60代女性
主訴:下痢と腹痛
現病歴:
初冬。原因はわからないが、今月2回下痢をした。その後、便秘、兎糞状、残便感あり、便意があるが出ない。今までも疲れて下痢をして、その後便秘することがあった。腹痛なし、4日出ていないが、腹脹や腹満なし。左腹部不快感。腸蠕動亢進なし。腹鳴なし。吐き気なし。ガスが出るが、出ても楽にならない。お風呂に入っても楽にならない。
その他の症状・所見:
もともと乳製品で下痢しやすい。胸の詰まりあり。小便10回/日、夜間1回。食欲低下。
経過:
下痢後に便秘となったのは、下痢による胃腸の乾燥か、下痢によって気虚陽虚に傾いたか。いずれにせよ、寒邪の侵襲の影響が強いと考えて、温めて胃腸を潤す薬を5日分。
3日後にお話をお聞きすると、細い便が出て、便の水分量が増えたとのこと。5日分飲み切るようにお話しした。
3週間後、前回の薬は効いたが、また食あたりから便秘となった。CTでは便が溜まり、ガスがかなり多いと言われた。とのこと。
昨日今日は肋骨下が痛い、手足の冷えややあり、こむら返りあり。と。
前回の薬に、正気を補う薬を足して21日分お渡しした。
その3週間後にお話をお聞きすると、今は薬なしで便通がよい。薬は少し余っているとのこと。
また同様の症状が出たら服用するようにお話しして一旦終了。
最初は、大建中湯で良くなったが、大建中湯では、正気(もともと持つ自分の力)を高めることにはならないと考え、2回目は、他の方剤と合わせてお渡しした。体調が崩れるのを防ぐため、本来なら少量で続けて服用してほしいけど、ご本人の希望もあるので、様子を見てみることにした。
大建中湯は寒邪を散らす薬で、虚を補うものではないと思うのだけど、本によっては人参が入っていることから、補気や補陽の効能があるかのように書いてあったりする。うーん。それって本当?体質的に陽虚がある人が大建中湯が適応する病態になりやすいのは確かだけど、この方剤を使ってとりあえず実寒を瀉すのではないの?
漢方薬って、単なる個々の生薬の薬能の集合ではなく、方剤になると違う特徴が現れたり、治す方向が変化するものがあって、これもその1つだと思うんだけどなあ。