老人必用養草12(精神の補養について2)

2020年7月9日(木)

香月牛山

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は精神の保養に関する部分の後半を読んでみます。


【原文】
・悲の情は心胞絡の主る所なり。年老いては気弱くして、憂にだも堪えがたし。悲はまた憂よりも気をけづる事倍せり。『素問』にも「悲ときは気消す」とあり。憂にしづむといふも、心のやる方もなきものなれど、涙の催すほどなる事なし。少のかなしみにもまづ涙のさきだつをもて、その重き事をしるべし。老人のとぼしき元気いかんぞ此悲に堪んや。悲はおほくは死別なり。老人には死別をつつみかくして聞せぬやうにすべき事なり。

・恐の情は腎の主る所なり。『素問』に「恐る時は気下る」とあり、老人は陽気下行して腎気なを弱し。恐怖の情を起す事なかれ。ここをもて盗賊などの入来るとても、老人の耳にはいれぬやうに取はかるべきなり。あるひは険岨なる山、深き淵などある所を見る事なかれ。恐懼のおもひをなして病を生ずる類多し。


・驚の情は胆の主る所なり。老人は気弱くして物を決断する事なし。少しの事にもおどろきやすし。ちかきあたりの火災などの時も、まづはやく立退しむべきなり。物をただおだやかにいひなして、心をおさめしめて躁すべからず。『素問』にも「驚く時は気乱る」とあり、能々心得べき事なり。


・上にいふところの七情は、医家に説所にして、もつぱら病を生ずるの事をいふなり。儒家の七情に愛・悪・慾を入て其名を異すといへども、畢竟はおなじ事なり。医家の思といふ内に此三つもこもるなるべし。此七情は人にそなはる所にして、賢愚老若共に智事なし。大過せざるやうをつねに工夫すべし。わきて慾情は七情の根本なるべし。慾とはほつする事にて、我心にかなひ我身によき事なれば、是非ともにとげたきの志をいふなり。
 (中略)愚なる人は、ただ己のほつする所みな道理にあらぬ私慾のみにて、しゐて貪る心多し。是、人の大悪情なり。
 (中略)老人は気弱く、義心薄くなりて慾ふかきに似たり。孝子順孫ありて、その分限よりも厚く衣食財宝などを奉るといへども、心にあきたる事なく、ただ不足のみおもひて子孫に対して怒を起す事おほし。これ人倫の道を害するのみにあらず。元気を耗して寿命を縮る事なり。能々心得て慾情を起す事なかれ。

【訳文】
・悲しみの感情は心胞絡が主る所である。年老いると気が弱くなり、憂い事にさえ耐えづらい。悲しみは憂いよりも倍も気を消費してしまう。『素問』にも「悲しむと気が消える」とある。憂いに心が沈むと言うのも、心のやる方もないことだが、涙が出るほどになることはない。少しの悲しみでもまず涙が先立って出てくることから、悲しみというものが重いことを知る。老人の少ない元気がどうやってこの悲しみに耐えることができるのか。悲しみは多くは死別である。老人には死別について包み隠して聞かせないようにするべきだ。

・恐れの感情は腎が主る所である。『素問』に「恐れるときは気が下がる」とあり、老人は陽気が下降して腎気はなおのこと弱い。恐怖の感情を起こしてはいけない。なので、盗賊などが入ってきたとしても、老人の耳には入らないように取り計らないといけない。あるいは険しい山、深い淵などがある所を見てはいけない。恐れの感情を抱いて病気が生じる人が多い。

・驚きの感情は胆が主る所である。老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く物事を決断することができない。少しのことにも驚きやすい。近所での火災なども、まず初めに早く避難させるべきである。物をただ穏やかに話し、心を修養して騒いではいけない。『素問』にも「驚くときは気が乱れる」とあり、よく心得るべきことである。

・以上に言う七情は、医者が説く所であり、病気を生じることを言っている。儒家の七情には愛・悪・慾が入っていて、名前が違うと言っても、結局は同じ事である。医者が“思”と言う中にこの3つも含まれている。この七情は人に備わっているが、賢愚老若すべての人が知らない。大きな過ちのないように常に工夫をしなくてはいけない。とりわけ欲情は七情の根本である。慾とは欲することで、自分の心身に適したことなら、ぜひとも遂げたい意志をいうのだ。
 (中略)愚かな人は、ただ自分が欲することは全て道理に合わない私欲だけであり、無理にでも貪る心が多い。これは人の非常に悪い感情である。
 (中略)老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く、義理の心が薄くなって欲が深くなる。孝子順孫(父母や祖父母につくす子供)がいて、その身の程よりも多く衣食財宝を献上するといっても、満足することがなく、ただ足りないとだけ思って子や孫に対して怒りを起こすことが多い。これは人倫の道を害するだけでない。元気を消耗して寿命を縮めることである。よく心得て欲を起こしてはいけない。


以上をまとめると、
・悲しみ、特に死別は老人には聞かせない方がいい。
・恐怖の感情も避ける。
・驚くことも避けて、騒がないようにしなくてはいけない。
・欲を抑えることが大事である。
ということです。


次は、体の保養のお話後半です。

漢方薬局ハレノヴァ

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大阪市北区末広町3-21 扇町センタービル1F

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しもやけ2

https://halenova.com/blog/?p=4041の続き。

50代男性

主訴:レイノー症状

現病歴:前にもらった薬を継続していたが、1日1回になったり、飲み忘れたりしていたところ、4月14日に両手人差し指が真っ白になった。触れると冷たかった。

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アトピー性皮膚炎②

 2020年から、アトピー性皮膚炎に対して、新たな作用を有する新薬が登場し、治療の選択肢が増えました。
 インターロイキンなどのサイトカインの作用経路を阻害して効果を発揮する薬です。

 新しい薬のメリットとデメリットをみて、意見を述べたいと思います。

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ササヘルス

ササヘルス1

ササヘルスについて

当店では、クマザサ抽出液のササヘルスを取り扱っております。
この薬の効能・効果は疲労回復、食欲不振、口臭、体臭除去、口内炎です。
この中でも、口内炎に対しては抜群に効きます。
口内炎だけでなく、口腔内の炎症全般に効果があり、また、胃炎などにも使えます。

口内炎ができた人、もしくはできそうな人は、1回10mLを口に含み、クチュクチュと痛みや違和感がある部位に当て、30秒~1分してから飲みこむようにしてください。
痛みや違和感が2~3分で消えることも少なくありません。治り切らないようなら、その日の晩や次の日に2回目を同じように飲んでください。
この方法で、ほとんどの方が効果を実感され、口内炎がよくできて悩んでいる方には非常に喜ばれます。
繰り返し口内炎ができる方には、少量を上に書いた方法で、毎日服用するのをおすすめしています。
この薬は、ほとんど副作用がないのも特徴の一つです。大量(127mL1本以上)を一気に飲むと、お腹が若干緩くなるくらいで、ほとんど害がありません。
スタッフの一人も、毎日15~20mLを1年以上服用していますが、全く問題ありません。

口内炎にお悩みの方は、一度、お越しになるか、ご連絡ください。お待ちしております。

瓊玉膏について③(不妊)

前回は、肌や髪に対する瓊玉膏の効果についてお話ししました。
【瓊玉膏について②】

今回は、不妊に対する効果についてお話しします。

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牛黄清心元の症例

廣東牛黄清心元の症例を紹介します。

30代女性
朝から少し頭痛があった所、仕事のミスで精神的にダメージがあり、顔がのぼせて頭痛がひどくなった。
廣東牛黄清心元1/4を口の中で舐めて溶かすように服用すると、清心元が無くなるころには頭痛が無くなった。

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アトピー性皮膚炎(乳幼児)

生後9カ月の男児

主訴:肌の赤みと痒み

現病歴:生後6か月ごろから肌の赤みと痒みが出てき始めた。ひどくはならないが治らない。赤みのある丘疹で、頭部にはなく、胸元や側腹部に数か所ある。アトピーと診断され、ワセリンなどの保湿薬を塗っている。

その他の症状・所見:よだれが多い。癇癪持ち。よく動く。

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板藍根

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板藍根について

板藍根は西洋医学的には、抗ウイルス作用があります。
かぜやインフルエンザの初期、のどが痛くなった時に服用すると効果的です。
また、単純ヘルペスなどにも、違和感があった時点で服用したり、西洋薬にプラスして服用すると、治りが早くなります。

漢方医学的には「清熱涼血解毒」作用があります。口が乾いて何か飲みたいが、量はそんなに欲しくない・扁桃腺が腫れる・舌が真っ赤・皮膚に赤い湿疹や紅斑ができるなどの症状に使います。
扁桃腺が腫れたり、湿疹や紅斑ができるところまでいかなくても、かぜの初期に葛根湯や銀翹散などと合わせることで治癒を早めたり、こじらせるのを防止する目的でも使います。
他にも、赤く強く腫れた単純ヘルペスや帯状疱疹ヘルペスは、「熱毒」によると考えられるため、発症初期から他の清熱解毒薬と併用することもしばしばあります。

本来なら、症状があるときだけの服用に留めた方ががよい生薬ですが、コロナが蔓延したこの状況では、毎日服用するのも仕方のないことだと思います。常用する場合は、体力のない方、体が冷える方、普段からお腹が緩い方などは1日に板藍根粉末顆粒1包(1g)程度の少量にしておき、喉が痛くなるなど、かぜの症状が現れたときには1gを2~3回服用するようにしてください。体力があり、全く冷えのない方は普段から多少おおくても構いません。症状が出た時は1gを1日3回しっかり服用してください。

かぜかなあと思った時に、銀翹散や葛根湯、コタロー一風飲小児用と一緒に服用し、一服で治ることもしばしばあります。
普段のかぜを始め、インフルエンザ、ヘルペスにも使える板藍根粉末顆粒は、家庭の常備薬としてイチオシです。

花粉症

バレンタインデーの時期は、スギ花粉が飛び始める時期と重なっています。
チョコの広告などを見ると、スギ花粉アレルギーの方はそろそろ花粉症対策をしなければと考えるのではないでしょうか。さらに、ヒノキ花粉アレルギーもある方は、ゴールデンウィークの辺りまで症状が続きます。この時期は花粉症の方にとって、見えない敵と戦う、大変な時期だと思います。

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瓊玉膏について②(肌や髪への効果)

前回は、老化に対する瓊玉膏の効果についてお話ししました。
【瓊玉膏について①】

今回は、肌や髪の潤いの効果についてお話しします。

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瓊玉膏について①(老化)

 瓊玉膏は腎陰(体の水分、体の冷却水の役割がある物)や腎精(体を作る大元の材料、生命力の源)を補うお薬です。
 老化の坂を緩やかにしたり、肺や肌を潤して空咳や乾燥肌、髪のパサつきを改善する効果があります。
 薬理学的研究では、血糖値や血圧の低下、活性酸素除去、脳神経の保護などが証明されています。(『慢性病と漢方薬 牛黄清心元、瓊玉膏、双和湯 編』より)
 他の記事はこちら↓
 【肌と髪への効果について】
 https://halenova.com/blog/?p=4273

 【不妊について】
 https://halenova.com/blog/?p=4384

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ガジュツ三黄散

 ガジュツ三黄散は飲み過ぎ、食べ過ぎ、胃もたれに効果があります。黄連などの苦味健胃薬が胃酸の分泌過多を抑え、ガジュツが胃腸の蠕動運動を亢進して、食べ過ぎによる胃もたれを治します。アルコールを飲むと体が熱く感じるように、漢方ではお酒は熱の性質を持つ飲み物と考えます。飲み過ぎると、体の中に余分な湿(水)や熱が溜まりますが、それがなかなか排出されないと、翌日に気分の悪さや頭痛、胃のムカつきに変わります。ガジュツ三黄散はお酒による湿熱を排出してくれます。食べて飲んだ直後にガジュツ三黄散を服用することで、食事とお酒による胃もたれ・二日酔いに症状に対処できます。
 飲み過ぎには、五苓散と合わせるとより効果的です。
 生薬100%の粉末からつくった薬ですので、添加物が不安な方も安心してお飲みになれます。
 実店舗でもオンラインショップでも販売しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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瓊玉膏の症例

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瓊玉膏を服用されている方の感想を紹介いたします。

50代女性
 親の介護で数年間、大変な時期があったが、しんどいながらも倒れることなく乗り切ることができた。

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五苓散

 五苓散は口が渇く、尿が出にくい、尿量が少ない、下痢気味、天気の悪い日の頭痛、手足の重だるさ、むくみなどの症状がある方に適しています。体の中の水のバランスを整え、不要な水を尿として排泄します。
 その他、二日酔いにも使われます。お酒を飲むと、利尿作用によって血液中の水は出ていきますが、細胞と細胞のすき間や、リンパ管には余計な水が溜まってしまい、頭痛や気分不良などを引き起こします。五苓散が水のバランスを整えることで、二日酔いにも効果を発揮します。お酒を飲む前にのむことで、予防効果もあり、その際はガジュツ三黄散と合わせるとさらに効果的で、次の日が違います。
 当店では実店舗、オンラインショップどちらでも、生薬100%の粉末からつくった五苓散を販売しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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ジンギョウキョウカツ湯・ジンギョウ防風湯

エキス剤では効果が不十分な方はぜひ煎じ薬を。
「インスタントコーヒー」のエキス顆粒ではなく、「ドリップコーヒー」の煎じ薬を服用してみるのはいかがですか。
詳しくは【煎じ薬のすすめ・利点】をご覧ください。

ジンギョウキョウカツ湯について
 痒みのある痔には、ジンギョウキョウカツ湯がおすすめです。キョウカツ、防風、蒿本などの痒みをとる生薬が入っています。

ジンギョウ防風湯について
 排便時に痛みのある痔核には、ジンギョウ防風湯がおすすめです。桃仁、大黄、紅花など血の滞りや鬱血を去る生薬が入っています。大黄が含まれているため、便秘気味の方が適しています。当帰、桃仁、大黄、紅花で血の流れをよくして、痔核(=血の滞り)を小さくします。
 

ジンギョウキョウカツ湯の販売はこちら↓
https://halenova-onlineshop.com/SHOP/Y0003.html

ジンギョウ防風湯の販売はこちら↓
https://halenova-onlineshop.com/SHOP/Y0004.html

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十全大補湯

エキス剤では効果が不十分な方はぜひ煎じ薬を。
「インスタントコーヒー」のエキス顆粒ではなく、「ドリップコーヒー」の煎じ薬を服用してみるのはいかがですか。
詳しくは【煎じ薬のすすめ・利点】をご覧ください。

十全大補湯について
 気力・体力ともに低下し、さらに冷えを伴った人に適しています。術後の回復を早めたり、抗がん治療を併用する上で、副作用の防止にも使われます。
 手術は出血を伴うため気血を消耗し、体の内部が外気と直接触れるため体の冷えをもたらします。
 抗がん治療も手術と同様、体力を奪い、気血を大量に消費します。気血を大量に消費すれば、“がんは小さくなったけど、体がものすごくしんどい” 状態になりかねません。そのような場合に、十全大補湯が活躍します。

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