2018年8月24日(金)
今日は香月牛山(かづきぎゅうざん)が書いた江戸時代中期の育児書『小児必用養育草(しょうにひつようそだてぐさ)』を読みます。
上の図は本の挿絵の1つですが、本文とは関係ありません。ちなみに、左に産婦、右には新生児に産湯を使わせる産婆が描かれています。
さて、巻二の「小児諸病の説」の一部にこんな記載があります。
「小児生まれて一両月の内に、臍突出て腫、其色赤く痛む病あり。臍突(サイトツ)といふなり。庸医(下手医師をいふなり)は大切なることといふをしらず、ただ臍風(サイフウ)などといひて臍帯のたちめより、風などの入たるごとくおもひて、軽々しく心得、治をあやまる事多し」と生々子の説に見えたり。早く驚き上手の医師をたのみて療治すべきなり。
適当に訳すと、
「子供が生まれて1、2か月の間に、臍が突き出て腫れて赤く痛む病気があり、臍突(サイトツ)という。やぶ医者は大事なことだと知らず、臍風(サイフウ)などと言って、臍帯を切ったところから風〔注:外から体に侵入する邪の一種〕などが入ったと軽く思い、治療を誤ることが多い。」と孫一奎の説がある。早くに上手な医者を頼って治療するべきである。
これは、臍ヘルニアで嵌頓を起こしたものだと思います。
このあと、続いて治療法の記載がありますが、そこは省きます。読んで欲しいのはその次です。
(中略)又、小児によりて此症とはちがひて、五、六歳までも臍の突き出でたる者あり。これは其色もつく事なく、痛もなく、ただ臍の出たる計にて、何の煩いもなき者なり。療治する事なかれ。七、八歳にいたれば、多くはひとりへりて常のごとくなるなり。見苦しくおもひて、はやくへらさんとおもはば、夏の時にその児(チゴ)袒(ハダカ)になりて遊ぶ時、おもひがけなきによくねらひて、杖のさきを円かにしてきぬにてよくつつみて、その杖のさきにて臍突のうへをつく時は、かならず一両月のうちにその臍突へるものなり。
現代語に訳すと、
また、子供によっては、この症状(上述の臍突)とは違って、5、6歳まで臍が突き出しているのもある。これは、色もなく、痛みもなく、ただ臍が出ているだけで、何の心配もない。治療する必要はない。7、8歳になると、多くは自然と普通の臍になる。見た目が悪いと思って、早く引っ込めようと思うなら、夏に子供が裸になって遊んでいるときに、先を絹で包んで丸くした杖で不意に臍を突くと、1、2か月の間に引っ込む。
これは、病気ではなく、ただのでべそだと思いますが、でべそってこれで治るんですね。結構簡単です。でべそを気にしていて、プールが嫌な子供もこの治療を施せば笑顔で着替えられるようになります。
この先を見てみます。
是また築紫の方の野人の一術なり。小児のおもひがけなき時をつくによりて、築紫の方にては、此事を瞽者にさする事なり。瞽者はつくべきとも小児おもはぬ所をつく故なるべし。
訳すと、
また、九州では、子供の不意をつくために、これを目の見えない者にさせる。これは、子供が目の見えない人は突くことができると思わないからだ。
ははぁ、なるほど。そうやって子供の不意をつくといいんですね。いいことを知りました。でべそに悩む子供をこれでどんどん治してあげたいと思います。
‥‥‥いや、無理やろ。