老人必用養草9(季節の養生について)

2020年2月14日(金)

香月牛山

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は「四時の保養の説(季節ごとの養生)」の中の秋、冬に関する部分を読んでみます。


【原文】
・秋三月を『素問』に「容平」といひて、陰升り陽降りて、万物みな収斂の気にあひて、万の花実も形容をなして、平かに定るの時なれば、蚤くふして初寒をさけ、鶏と共にはやく起て、新に爽なる気にしたがふべし。これ収を養ふの道なり。老人は気血ともに弱く、元気とぼしければ、この時つつしまざれば、初寒の気にあてらるるものなり。夏の炎熱たかぶり極りて、俄に秋降の陰気に変ずれば、陽と陰との入替る時にして、寒露たちまち霜に結び、新冷の気行るるによりて、人の肺気を破る。老人かならず此時気に犯されやすし。能々つつしむべき時なり。

・冬三月を『素問』に「閉蔵」といひて、万物みなおさまりかくるるの時にして、人もこれにのつとりて蚤く臥し、おそく起、日の光をまち、寒をさけ、温につき、志をして伏するがごとく、静にして、みだりに動事を禁ずるなり。これ蔵を養ふの為なるべし。老人は気血ともにうすければ、四時の内、冬月の寒気尤犯しやすし能々つつしみ守るべき也。

・冬月、老人の座席は、障子をさしまはし、屏風など引かこひて、衾炉をまふけて圃団をしきて在しむべし。『千金方』にも「冬月の居止の室は密を用べし。細隙あらしむべからず。風気入る事あらば、急々にすきまを塞ぐべし。かくのごときの風寒の入来る所ならば、速やかに避べし。しゐて座すべからず。中風の病を生ず」といへり。誠にさある事なり。あらはに出て風寒にあたりたるよりは、すき間の些少の賊風には犯されやすきものなり。冬月の老人の座席心を用てしつらふべき事なり。

・冬月老人の寝る所は猶更すきまのなきやうに、戸障子をさし、屏風を引かこひ、床には毛ある皮の圃団をしきて、其上に絹の圃団を二重三重ほど敷て臥しめて、上の夜着ひとつは絹を用ゆべし。その上に紙子の夜着を着すべし。重からずして寒を防ぐなり。下に圃団をあまたしけば、上にはあつく着ずといへども温なるものなり。

・老人は寒暑ともに堪がたきといへども、暑にいたむよりも寒にいたむ物おほし。いにしへよりの名人達の天年をたもちえて、その終をとりたるときくに、おほくは冬春の間の寒気さかんなる時なり。(中略)しかれば老人は、寒気の時をおそれつつしみて、保養を加ふべき事なり。


【訳文】
・秋の三か月を『素問ソモン』では「容平ヨウヘイ」と言って、陰が昇り、陽が降りて、万物全てが収まり縮む気にあって、全ての果実も形作り、平らかに定まる時なので、早く寝て寒さを避け、鶏と共に早く起きて、新しく爽やかな空気に従うのが良い。これが収を養う方法である。老人は気血ともに弱く、元気が少ないので、この時に節制しなければ、初寒の気にあてられる。夏の暑さが極まり、急に秋の陰気に変化するので、陽と陰の入れ替わる時であり、露が霜になり、新たな冷気がめぐり、人の肺気を損なう。老人は必ずこの時期の気に犯されやすい。よく節制するべき時である。

・冬の三か月を『素問』では「閉蔵ヘイゾウ」と言って、万物全てが納まり隠れる時であり、人もこれに則って早く寝て遅く起き、日が出てくるのを待ち、寒を避けて暖をとり、志を持ちながらじっと耐えるように、静かにして、やたらと動くことを禁じる。これは蔵を養う為である。老人は気血ともに少ないので、4つの季節の内、冬の寒気にもっとも侵されやすいため、よく節制して守るべきである。

・冬は、老人の座席は、障子を向け、屏風などで囲って、炉を設えて布団を敷くのがよい。『千金方』にも「冬月の居間は気密にする。細かな隙間もあってはならない。すきま風が入れば、すぐに隙間を塞ぐ。このような風寒の入る所であれば、すぐに場所を移動する。無理に座っていてはいけない。中風の病を生じる。」という。誠にその通りである。表に出て風寒にあたるより、隙間の少しの風には犯されやすいものである。

・冬に老人の寝る所は猶更隙間がないように、戸障子をさし、屏風で囲い、床には毛がある皮の布団を敷いて、其の上に絹の布団を二重三重に敷いて横になり、上の夜着ひとつは絹を用いて、その上に紙子の夜着を着る。こうすることで重くなく、寒を防げる。下に布団をたくさん敷けば、上に厚く布団をかけなくても温かいものである。

・老人は寒さも暑さも堪えがたいと言っても、暑さより寒さで体を壊すものが多い。古来から賢人たちが寿命を全うしてその終わりを遂げたのを聞くと、多くは冬と春の間の寒気が盛んな時である。(中略)それなので、老人は寒気が盛んになる時を恐れつつしんで、養生をするべきである。


以上をまとめると、
秋は、早寝早起きをして、新鮮な空気を吸い込むのがよい。
冬は、早く寝て遅く起き、陽が出てから行動するが、やたらと活発に動いてはいけない。すきま風には十分注意して、入らないように、当たらないように工夫する。布団は下にたくさん敷いて、掛布団は少なめにする。とにかく、寒さに注意して過ごす。
ということです。

次は、起床時と就寝時のお話です。

老人必用養草12(精神の補養について2)

香月牛山

2020年7月9日(木)

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は精神の保養に関する部分の後半を読んでみます。


【原文】
・悲の情は心胞絡の主る所なり。年老いては気弱くして、憂にだも堪えがたし。悲はまた憂よりも気をけづる事倍せり。『素問』にも「悲ときは気消す」とあり。憂にしづむといふも、心のやる方もなきものなれど、涙の催すほどなる事なし。少のかなしみにもまづ涙のさきだつをもて、その重き事をしるべし。老人のとぼしき元気いかんぞ此悲に堪んや。悲はおほくは死別なり。老人には死別をつつみかくして聞せぬやうにすべき事なり。

・恐の情は腎の主る所なり。『素問』に「恐る時は気下る」とあり、老人は陽気下行して腎気なを弱し。恐怖の情を起す事なかれ。ここをもて盗賊などの入来るとても、老人の耳にはいれぬやうに取はかるべきなり。あるひは険岨なる山、深き淵などある所を見る事なかれ。恐懼のおもひをなして病を生ずる類多し。


・驚の情は胆の主る所なり。老人は気弱くして物を決断する事なし。少しの事にもおどろきやすし。ちかきあたりの火災などの時も、まづはやく立退しむべきなり。物をただおだやかにいひなして、心をおさめしめて躁すべからず。『素問』にも「驚く時は気乱る」とあり、能々心得べき事なり。


・上にいふところの七情は、医家に説所にして、もつぱら病を生ずるの事をいふなり。儒家の七情に愛・悪・慾を入て其名を異すといへども、畢竟はおなじ事なり。医家の思といふ内に此三つもこもるなるべし。此七情は人にそなはる所にして、賢愚老若共に智事なし。大過せざるやうをつねに工夫すべし。わきて慾情は七情の根本なるべし。慾とはほつする事にて、我心にかなひ我身によき事なれば、是非ともにとげたきの志をいふなり。
 (中略)愚なる人は、ただ己のほつする所みな道理にあらぬ私慾のみにて、しゐて貪る心多し。是、人の大悪情なり。
 (中略)老人は気弱く、義心薄くなりて慾ふかきに似たり。孝子順孫ありて、その分限よりも厚く衣食財宝などを奉るといへども、心にあきたる事なく、ただ不足のみおもひて子孫に対して怒を起す事おほし。これ人倫の道を害するのみにあらず。元気を耗して寿命を縮る事なり。能々心得て慾情を起す事なかれ。

【訳文】
・悲しみの感情は心胞絡が主る所である。年老いると気が弱くなり、憂い事にさえ耐えづらい。悲しみは憂いよりも倍も気を消費してしまう。『素問』にも「悲しむと気が消える」とある。憂いに心が沈むと言うのも、心のやる方もないことだが、涙が出るほどになることはない。少しの悲しみでもまず涙が先立って出てくることから、悲しみというものが重いことを知る。老人の少ない元気がどうやってこの悲しみに耐えることができるのか。悲しみは多くは死別である。老人には死別について包み隠して聞かせないようにするべきだ。

・恐れの感情は腎が主る所である。『素問』に「恐れるときは気が下がる」とあり、老人は陽気が下降して腎気はなおのこと弱い。恐怖の感情を起こしてはいけない。なので、盗賊などが入ってきたとしても、老人の耳には入らないように取り計らないといけない。あるいは険しい山、深い淵などがある所を見てはいけない。恐れの感情を抱いて病気が生じる人が多い。

・驚きの感情は胆が主る所である。老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く物事を決断することができない。少しのことにも驚きやすい。近所での火災なども、まず初めに早く避難させるべきである。物をただ穏やかに話し、心を修養して騒いではいけない。『素問』にも「驚くときは気が乱れる」とあり、よく心得るべきことである。

・以上に言う七情は、医者が説く所であり、病気を生じることを言っている。儒家の七情には愛・悪・慾が入っていて、名前が違うと言っても、結局は同じ事である。医者が“思”と言う中にこの3つも含まれている。この七情は人に備わっているが、賢愚老若すべての人が知らない。大きな過ちのないように常に工夫をしなくてはいけない。とりわけ欲情は七情の根本である。慾とは欲することで、自分の心身に適したことなら、ぜひとも遂げたい意志をいうのだ。
 (中略)愚かな人は、ただ自分が欲することは全て道理に合わない私欲だけであり、無理にでも貪る心が多い。これは人の非常に悪い感情である。
 (中略)老人は気(訳注:体が正常に働くためのエネルギー)が弱く、義理の心が薄くなって欲が深くなる。孝子順孫(父母や祖父母につくす子供)がいて、その身の程よりも多く衣食財宝を献上するといっても、満足することがなく、ただ足りないとだけ思って子や孫に対して怒りを起こすことが多い。これは人倫の道を害するだけでない。元気を消耗して寿命を縮めることである。よく心得て欲を起こしてはいけない。


以上をまとめると、
・悲しみ、特に死別は老人には聞かせない方がいい。
・恐怖の感情も避ける。
・驚くことも避けて、騒がないようにしなくてはいけない。
・欲を抑えることが大事である。
ということです。


次は、体の保養のお話後半です。

PMS(月経前症候群)

PMS(月経前症候群)は、生理の3〜10日位前から起こる体や気持ちの不調で、生理が来ると症状が弱くなり、消えていくものを指します。
月に一度、有無を言わさず来る生理。PMSがひどい人にとって、苦行の期間です。
生理というのは、ベッドを毎月新調して、赤ちゃんを迎える準備をするためのものです。こんな素敵なことなのに、痛みや気分の不調、体のだるさや肌荒れなどに悩むのは、何だかギャップがありすぎて、腑に落ちません。
でも、それは、バランスが崩れたことで出てくる、体からの黄信号かもしれません。
生理痛やイライラや落ち込みなどの気持ちの変化もなく、あったとしても、意識するレベルではないのが、理想の状態です。
特に、赤ちゃんを産みたい人、そうでない人も、早いうちにバランスを整えて、体や気持ちの不調なく、スッキリと生理を迎えられるようにしましょう。

体質を判断するには、特に生理の状態を詳しくお聞きします。
生理周期、期間、量、色、塊の有無、生理期間の中で痛みや不調の出るのはどの時期か、経血が出ると楽になるのか、悪化するのかなど、細かく教えていただきます。
一度、ご自分の生理の状態をじっくり観察して、メモしてくださるといいかもしれません。
その他、汗、のぼせ、体の冷え、食欲などをお聞きし、舌の状態なども確認して、総合的に体質を判断します。

使う薬は、もちろん人それぞれ違います。
イライラや胸のハリなどの気の巡りが悪い(気滞)症状が強ければ理気薬、冷えが強ければ温裏薬、食事の不摂生や体に熱を溜めやすい体質なら清熱利湿薬、消化吸収が悪くて気(エネルギー)や血(けつ)を作れていなければ(脾気虚なら)補気薬や補血薬、生まれ持った体質で腎が弱かったり房事過多などで腎を傷つけてしまっていたら補腎薬を中心に、程度によって駆於血薬などを合わせていきます。

崩れたバランスを元に戻すには、早めの対策が必要です。
どんな病気も、こじれると、治りにくく、症状も強くなっていきます。
これからの人生を楽しく過ごすためにも、漢方で早めにPMS対策をしましょう。

胃のつかえ

70代女性

主訴:胃のつかえ、食欲不振

現病歴:5月中旬に来店。一度体調を崩してから、スッキリしない。食欲がない。お腹に入らない。横になりたい。頭から汗が出る。胃が重い。紅舌、老、黄厚苔(中央から奥)、数脈、やや弦。みぞおちの痞え(+)。もとから便秘気味。

脾胃の気滞をとる方剤を10日間服用してもらったが、無効。
便秘気味、心下痞から、瀉心湯類と、降濁作用の強い方剤に変更。
4日分服用したところ、便通はよくなったが、やはりまだ胃が痞える。食べていないときはどうもないが、食べると痞える。
そこで、瀉心湯を香蘇散に変更。
5日分服用したところ、合っているように思う、調子が良いとのこと。

考察:黄厚苔から瀉心湯を選んだが無効だったため、『方函口訣』の「鳩尾ニテキビシク痛ミ昼夜悶乱シテ建中瀉心ノ類ヲ用ユレドモ寸効ナキ者に与テ意外ノ效ヲ奏ス」から、香蘇散を選んだ。エキス剤は蘇葉の香りがかなり弱いので、原末の製剤にした。
   今回は、一日中悶えるほどのみぞおちの痛みではなかったが、ちゃんと効果があった。
   建中湯、瀉心湯と香蘇散では適応する病態が違うはずなので、うでを磨けばちゃんと判断できるのだろうか。それとも、浅田宗伯も迷うほど、証が似ているのだろうか。

歯の痛み

40代女性

主訴:歯の痛み

現病歴:歯科治療をした後、抗菌薬をもらって数日間服用したが、効果がなく歯が痛い。昨晩は痛みでよく眠れなかった。

第三世代セフェム系を処方されていた。その時点で、ちゃんと抗菌薬を使う先生の所へ行った方がいいのではないかと思った。が、それは置いておく。〔第三世代セフェム系は、バイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が悪く、ほとんど吸収されない。忽那先生の言う、DU(大体うんこ)処方であり、また、岩田先生は第三世代セフェム系を選択するケースなどほとんど思いつかないと言う。〕

すぐに効かせるために、新今治水(当店に販売用では置いていない)をつけてもらい、寝る前に清熱解毒の散剤(エキス剤ではなく生薬の粉末)を水に溶かしてうがいをして飲み下すように指示。3日間、朝昼服用と寝る前に含嗽使用とした。
使用したその日から痛みがほとんどなくなり、2日目以降は新今治水は使用せず、漢方薬だけを3日服用して治癒した。

考察:新今治水もすぐに痛みを取るために効果があったと思うが、漢方薬がしっかり効いたと思われる。黄連解毒湯を使用したが、エキス剤ではなく散剤を使ったのは、黄連の量が割合も量も、エキス剤より多いという理由からだった。口内炎や歯肉炎の場合、帰経から考えて、黄連と山梔子が適応になると思われる。(大塚敬節先生の『漢方と民間薬百科』には、キハダも口腔内の炎症に民間薬として使われるみたいだが。)
   直接、患部に当てられない部分の炎症には、程度によって、清熱消腫の生薬を合わせた方がいいように思う。

生理痛

30代女性

主訴:生理痛

現病歴:社会人になってから生理痛に悩まされるようになった。最近は排卵痛もある。肩こりや首コリなどもある。腰から下、太もも、お尻が冷える。腰痛、腰のだるだもあり。むくみがあり、トイレの回数は少ない。

血、水の巡りが悪いため、冷え、痛みが出ていると判断
まずは活血化於の薬を服用してもらい、生理の痛みはほとんどなくなった。
冷え、排卵痛はまだ続いているとのこと。
胞宮於阻もあり、引き続き、活血と温経散寒、水巡りもよくするお薬にして服用してもらった。
冬でも冷えはほとんどなくなり、生理痛もなく快適に過ごしているとのこと。

潰瘍性大腸炎

 潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患です。腹痛や血の混ざったイチゴジャムのような下痢が出るのが特徴です。びらんや潰瘍は直腸から連続的して、口側へ広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。

 もともとの体質に、脾や腎の弱さがあり、多くの場合、そこへ不摂生が重なり、発症します。
 大腸には炎症があり、血便などの症状があるため、体に余分なものがある「実」のように見えますが、本来は体の弱さから発症しているため、「本虚表実」です。

 悪化しているときは、湿熱、血於、気滞などの実の症状が強くなるため、瀉す治療を主として、緩解しているときは脾や腎の虚弱などが現れ、補う治療を主とします。

 便の量、色や腹痛の程度、性質、普段の体質に関して詳しくお聞きし、舌と脈で体の中の状態をみます。

 ※舌診や脈診は全身状態を把握するために重要なため、欠かせません。特に、舌診は方剤が適しているかどうかを判断するのに重要です。症状の変化が乏しくても舌が変わる事もあり、治療方針の決定に役立ちます。
 来店される方は、来店前の2時間ほどはコーヒーや紅茶など、色の付く飲み物を飲まずに来てください。また、食事でも苔が変化するため、2時間ほどは食事にも気を付けていただけると、非常に助かります。

 腹痛や便の血、水分量、舌の変化などで薬の効果を評価します。
 大まかな方針が決定するまで、7日~10日間隔で来店してもらい、体の状態を観察していきます。

 ご本人の自分の症状や体に対して、細かく観察し変化を報告してくださると、方剤が決定しやすくなります。
 目標は、寛解期を持続させ、ご自分で漢方薬を使い、普段の食事でコントロールできるようになることです。


 ※青黛について
  潰瘍性大腸炎に効果があるとして、特効薬のように言われ、漢方に詳しくない方に “乱用” されたせいで、重篤な副作用が発生しました。
  青黛は肝、または心、肺、胃を冷やすとされています。五臓の中で一番デリケートな肺を冷やし過ぎて、於血を生じ、肺動脈性高血圧症が発生したと考えられます。本来、漢方薬は、補瀉、寒熱などのバランス、季節、症状の程度を考え、その人に合わせて服用してもらうものなので、青黛だけを単味でずっと飲むようなことはするはずがありません。
  副作用が発生し、厚生労働省の通達が出てから、青黛は一切販売しておりませんので、販売に関してのお問い合わせにも満足のいくお答えができません。
  その点はご了承いただけますようお願い申し上げます。
  青黛以外の生薬を用いて、ゆっくり相談時間をかけて、お一人お一人に合わせて漢方薬を選びます。

指の腫れ、痛み

30代男性

主訴:中指の腫れ、痛み

現病歴:3週間ほど前に、爪の端が剥がれていたのを引っ張ってちぎった。その後、そこから細菌が感染したのか、ずっと指が痛みこの1週間でだんだん痛みと腫れが増してきた。以前にもこんなことがあり、受診して、切開して膿をだしてもらったが、その時は生活に支障が出るほど痛かったので、そうならないうちに何とかして欲しい。

局所の症状のため、体質などの問診は省いた。熱感があまりないことだけ確認。清熱消腫の生薬2種を1週間煎じて服用してもらった。

1週間後、腫れは引いた。痛みもマシになったが、まだ痛むとのこと。
感染や治癒したが、まだ排膿しきれず、膿が周りの組織を圧迫して痛みが出ていると推測。
排膿のための方剤を使用し、3日で治癒した。

thinkihadititisには対応できないかも

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2020.6.4

ご来店の方に安心していただくために、レジには以前からシートを上から吊り下げていましたが、より使いやすいものにバージョンアップしました。
ご相談の方に関してもできるだけリスクを避けるために、アクリル板を設置しております。
また、空気の循環をよくするため、上部にファンも設置しました。

「新しい生活様式」も上から押し付けられたり、他人に押し付けたりするのではなく、やっていきたいなあ。
息切れしないように。

二日酔い

お酒の性質は大熱で、少量(ほろ酔いより少なめ)なら血流をよくする働きがあります。
二日酔いは胃に熱が溜まり、胃気が暴走して上にあがったことによる吐き気や、頭部の水の滞りによる頭痛などの症状が出てきます。

それを防ぐ為には、お酒を飲む前や飲んだ後に五苓散とガジュツ三黄散を服用してみてください。次の日が違います。
五苓散が体の中の水の偏在を治し、ガジュツ三黄散が食事の滞りとお酒による体の熱をとってくれます。

お酒を飲んだときの短期的な身体への影響は胃熱と水滞ですが、長期的になるとまた違います。
もし、付き合いなどで飲む機会が多ければ、肝機能を高める田三七をおすすめします。

お酒を毎日飲んでる方は、休肝日をつくり、田三七も毎日飲みましょう。
実際に、田三七のおかげで楽しみながらお酒を飲めている方多くいらっしゃいます。

老人必用養草11(精神の補養について1)

香月牛山

2020年5月20日(水)

引き続き『老人必用養草(ろうじんひつようやしないぐさ)』を紹介します。
この本は香月牛山(かつきぎゅうざん)が1716年に著した本です。
老人の養生、老人への接し方など現代にも通じるいろいろな教訓が書かれていて、今読んでもためになります。

今日は精神の保養に関する部分の前半を読んでみます。


【原文】
・七情は、医家には喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という。『素問』に出たり。儒家には喜・怒・哀・懼・愛・悪・慾といふ。『礼記』に見えたり。人、此身あれば此情なくんばあらじ。これをほどよくすれば元気めぐりて養となり、節(ほどよき)に過れば此身を害するなり。(中略)老人は気血弱き故に七情の私にかつ事をえず。虚火たかぶりて動きやすし。能々つつしむべき事なり。

・喜びの情は心の司る所なり。人、年老ては気血とぼしくなりて、物毎にただ感情ぶかく、喜しき事を聞ても、うれしなきとて涙を流す。子となり孫となりて、常に老親の前にて物がたりには、天下の太平と国の掟の正しき事と、一門の繁栄、他門のよき事とのみをいひ聞する時は、喜を生じて寿ものぶる心地するなるべし。(中略)『素問』に喜ときは心を傷ると、又喜ときは気緩まるといへり。七情のうちにて、喜ばかりは老人にさまで害をなす事なし。されどもそのよきほどはあるべき事なり。


・怒りの情は肝の主る所なり。年老ては陰血涸て孤陽ひとりたかぶりて、ややもすれば怒やすし。孝子順孫ありといへども、心にかなふ事なく、倭俗の諺にいふがごとく「隠居ひがみ」とやらんにて、何かにつれて不足のみをいひ出て、親子の中もむつまじからぬ類おほし。子としては随分をのれをつくして孝をつとめて、怒をおこさぬやうにすべし。(中略)『素問』に 「怒ては肝を傷る」、又「怒ときは気上る」といへり。


・憂の情は肺の主る所なり。年老ては気とぼしくなるによりて、身の憂、子孫の憂はさらなり。他人の憂を聞だにも心よからず。老後その身も康寧にして、子供に病患もなく、生別死別の憂もなければ、天年の寿命よりも生のぶる心地するなり。如斯(かくのごとく)の幸なる人は、上寿をもたもつべきに、一両年の間に子孫にあやしき変災など出来て憂事打つづく時は、俄に老衰して死する類おほし。(中略)『素問』に「憂ては肺を傷る」、又「憂るときは気聚る」といへり。

・思の情は脾の主る所なり。年老ては気とぼしく、物を思慮する事よろしからず。『素問』にも「思ときは気結る」といへり。文学など好む人も詩賦文章などをふかく思惟すべからず。


【訳文】
・七情は、医師は、喜び、怒り、憂い、思い悩み、悲しみ、恐れ、驚きという。『素問』に書いてある。儒家は、喜び、怒り、哀しみ、懼れ、愛、悪み、慾という。『礼記』に書いてある。人は体があれば感情がないわけがない。ほどよく感情を表すことで元気が巡って体を養うが、過度になると体を害する。(中略)老人は気血が弱いので感情を抑えることができない。虚火がたかぶって症状が出やすい。よく慎まないといけない。

・喜びの感情は心が司る所である。人は年老いると気血が少なくなって、何かあるごとに感情が大きく、喜ばし事を聞くと、うれしなきと涙を流す。子や孫が、常に老親の前で話すには、世間の平和と国の決まり事のただしさと、一族の繁栄、そのほかよいことだけを言い聞かせれば、喜びが生じて寿命も延びる心地がする。(中略)『素問』に喜ぶときは心を傷つける、また喜ぶときは気が緩まるという。七情のうちでは、喜だけは老人にそこまで害をなすことはない。そうではあるが、程度をわきまえるべきだ。

・怒りの感情は肝が主る所である。年老いると、体の水分や血液が涸れて少なくなり、体の機能だけがたかぶって、少しのことで怒りやすい。孝子順孫(父母や祖父母につくす子供)がいても、心に沿うことがなく、俗に言うような「隠居ひがみ」のように、何かにつけて不満だけを言い、親子の仲も疎遠となるものが多い。子供としてはずいぶんと身を尽くして孝行につとめ、怒りが起きぬようにする。(中略)『素問』に「怒ると肝を傷つける」、また「怒ると気が上る」という。

・憂いの感情は肺が主る所である。年老いると元気が減るにつれて、体の心配、家系の心配はさらに高まる。他人の心配を聞くことさえ心によろしくない。老後に体も健康で、子供に病気もなく、生き別れ死に別れの心配もなければ、天から授けられた寿命よりも生きのびる心地がする。このような幸せな人は、百歳でも生きられるはずだが、1,2年の間に子や孫におかしな災いなどが起こり、憂い事が続くなら、突然、老衰して死んでしまうものが多い。

・思い悩む感情は脾が主る所である。年老いると気が減るので、物事を深く考え込むことはよくない。『素問』にも「思い悩むと気が結ぼる」という。文学などを好む人も詩や歌、文章を深く考え込んではいけない。


以上をまとめると、
・感情を発散させすぎるのはいけない。適度に感情豊かに。
・喜びはほどほどであれば心と体によい。
・老人は少しのことで怒りやすくなる。怒ると気が頭に上る。
・心配事が続くと、急に心身が衰えて死ぬことがある。
・年老いてからは、考え事もほどほどに。


次は、精神の保養のお話後半です。

生理痛

20代女性

主訴:生理痛

現病歴:生理痛はもともと思いくらいだったが、ここ1年ほどで刺すような痛みになった。1日目、2日目が痛い。3日目以降はあまりない。生理周期が早く、20日くらい。とぶことはない。昔は遅かった。全体的に量が少なく、4日ほどで終わる。顔や足がむくみやすい。天気の悪い日は体がだるくなる。汗をかきやすい。毎日、アイス2個やスナック菓子、甘いものを間食する

補血活血化淤の薬に痰を取り除く薬を合わせ、食事指導を行った。
11日後、再来店。朝の目覚めやスッキリ感が改善し、ちゃんと寝ている感じがある。天気の悪い日に調子が悪くなることがなくなった。むくみは変化わからない。
25日後、前回は生理痛軽減。経血量増え、塊は減った。
その後、1か月間は1日分を2日分として服用してもらい、PMSもなく、調子よく過ごせた。
事情により、長期で海外へ行くため、終了となった。

嘔吐

20代女性

主訴:嘔吐

現病歴:数日前から電車に乗ると吐いてしまう。吐く前は悪寒、悪心があり、吐いた後もスッキリせずしんどい。時間帯や立つ座るに無関係。3日前からアイスや炭酸が欲しくなった。胃はもともと丈夫で、脂っこいものも平気。乗り物酔いしない。舌は紅舌、少苔、痩薄。舌下動脈の怒張はない。

胃熱を冷ます処方と胃気を降ろす処方を7日間処方し、辛いもの甘いものと食べ過ぎを控えるように指示。3日服用すると吐くことはなくなり、7日間服用して終了した。

むくみ

40代女性

主訴:むくみ

現病歴:食べると体がむくみやすい。顔、脚、お腹、腕など全身。一日中むくみやすい。食後にお腹のハリがある。通勤で片道20分ほど歩いている。胸やけ(-)、胃のちゃぽちゃぽ感(-)、食べ過ぎると腰がだるい感じがする。

消導薬と芳香化湿薬、利水薬を合わせて7日間処方。
徐々に体全体のむくみが減り、楽になった。目の周りのはれぼったさも減り、気分もスッキリした。一日中だるかったのも今はない。天気の悪い日にしんどかったが、今日(再び来店された日は雨)は大丈夫。
今までは食欲がなくても無理やり食べていたが、空腹感も感じる。便通がよく、げっぷやおならも出てスッキリする。
1か月半服用して終了した。

にきび

 にきびは分泌された皮脂が毛穴から出ずに詰まってしまうことから始まります。皮脂が詰まり、毛穴の表面が閉じているのは白にきび(閉鎖面皰)とよばれ、白く膨れて触るとわかるにきびで、炎症が起こる前の段階です。皮脂が詰まり、毛穴の表面が開いているのは黒にきび(解放面皰)とよばれ、黒く見えるにきびで、こちらは白にきびと違って、炎症に発展することは少ないです。
面皰ができたのち繁殖したアクネ菌が炎症誘発物質を放出したり、産生された細菌性リパーゼによって遊離脂肪酸が生成され、炎症が進んでいきます。

 にきびは、肝や腎のはたらき(ホルモンバランス)の異常や、食事によって湿熱が溜まったり、血が肌に滞り熱を持つようになったり、血の生成不足や血流の不足によって皮膚に栄養が届かないことによってできます。

 赤みの程度やできやすい時期、普段の食事内容などをお聞きして方剤を決定します。

 にきびが出だした若いころから早い時期から漢方薬を飲むことで、跡が残りにくくなります。
 また、長年のにきびでも、へこみがなくなることは難しいですが、色素沈着などはだんだんときれいになっていきます。

 周りはあまり気にしていなくても、本人にとっては、非常に苦痛を伴います。仕方ないと諦めずに、相談にいらしてください。

アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は乳児期は頭や顔に多く、成長につれて体幹や手足の関節部分の乾燥が目立つようになります。思春期以降になると顔や肩など上半身全体に湿疹ができやすくなります。
 というのが、一般的な説明ですが、実際には年齢によっても、人によっても起こる症状は様々です。
 一様に「アトピーにはこの薬」といったものはなく、その人に合わせたお薬を考えてお渡しします。

 アトピー性皮膚炎はダニやハウスダストなど、外からのアレルギー物質によって起こることもあれば、湿をうまく排泄できない体質、血のめぐりが悪い体質など、身体の内が原因で起こることもあります。
 肌は乾燥していても、体の中に痰湿(はたらきを失った水)が溜まっていることが少なくありません。また、余分な熱も溜まり、その熱が肌を乾燥させていたりします。
 漢方薬でその水の偏在を正し、余分な熱を取り除き、肌が正常に生まれ変わりやすい体質をつくります。

 症状のある個所がジュクジュクしていないか、体のどの部位にあるのか、赤みの強さや触った時の熱感などを見ます。できれば、症状がある部分を見せられる服装で来てください。

 ※舌診や脈診は全身状態を把握するために重要なため、欠かせません。特に、舌診は方剤が適しているかどうかを判断するのに重要です。症状の変化が乏しくても舌が変わる事もあり、治療方針の決定に役立ちます。
 来店される方は、来店前の2時間ほどはコーヒーや紅茶など、色の付く飲み物を飲まずに来てください。また、食事でも苔が変化するため、2時間ほどは食事にも気を付けていただけると、非常に助かります。

 もちろん、肌の調子が良くなることで方剤が適しているかを判断できますが、上に書いた通り、舌でも判断します。写真をとって、相談者さんと一緒に今の体の状態を確認し、これからどうしていくかをお話しします。
 肌が悪化したのを、「毒が出ている」「良くなる前の反応」などと言われることがありますが、アトピーの漢方治療に限って言えば、それはないと思います。悪化した場合、原因となった方剤を中止し、悪化したことで得られた手がかりから次からの方針を決めます。
 大まかな方針が決定するまで、初めのうちは5日間や7日間間隔で来店してもらい、繰り返し肌と体の状態を観察していくことが重要です。

 ご本人の自分の症状や体に対して、細かく観察し変化を報告してくださると、方剤が決定しやすくなります。
 アトピーはまかせきりにして治すのではなく、相談をする側とされる側が一緒になって治していくものです。


 アトピーは強い痒みや人目に付きやすいことから、ご本人は苦しんでいらっしゃると思います。
 アトピーの方は本来はきめ細かい肌ですので、症状が改善して、きれいになるようにお手伝します。