70代女性
主訴:胃のつかえ、食欲不振
現病歴:5月中旬に来店。一度体調を崩してから、スッキリしない。食欲がない。お腹に入らない。横になりたい。頭から汗が出る。胃が重い。紅舌、老、黄厚苔(中央から奥)、数脈、やや弦。みぞおちの痞え(+)。もとから便秘気味。
脾胃の気滞をとる方剤を10日間服用してもらったが、無効。
便秘気味、心下痞から、瀉心湯類と、降濁作用の強い方剤に変更。
4日分服用したところ、便通はよくなったが、やはりまだ胃が痞える。食べていないときはどうもないが、食べると痞える。
そこで、瀉心湯を香蘇散に変更。
5日分服用したところ、合っているように思う、調子が良いとのこと。
所感:黄厚苔から瀉心湯を選んだが無効だったため、『方函口訣』の「鳩尾ニテキビシク痛ミ昼夜悶乱シテ建中瀉心ノ類ヲ用ユレドモ寸効ナキ者に与テ意外ノ效ヲ奏ス」から、香蘇散を選んだ。エキス剤は蘇葉の香りがかなり弱いので、原末の製剤にした。
今回は、一日中悶えるほどのみぞおちの痛みではなかったが、ちゃんと効果があった。
建中湯、瀉心湯と香蘇散では適応する病態が違うはずなので、うでを磨けばちゃんと判断できるのだろうか。それとも、浅田宗伯も迷うほど、証が似ているのだろうか。