40代女性
主訴:目、口など粘膜が乾く
現病歴:3年前から症状。眼科ではドライアイほどではないと言われる。朝起きた時に目が痛くて開けづらい。症状は季節に関係ない。改善条件、悪化条件特になし。目が乾くが、涙は出やすい。鼻が乾くが、鼻水は出やすい。ヒアルロン酸点眼、ジクアス点眼であまり改善なし。
その他の症状:軟便・水様便気味。手足のほてり(+)、頬部の赤み(+)、上半身の多汗(+)、排尿4~5回/日、氷入りの飲み物飲めない、飲酒ほぼ毎日、眼の充血(+)、めやに(+)、口の荒れ(+)、口臭(+)、口渇(+)、動悸(+)、びっくりしやすい、天気の悪い日に体調が悪い。月経周期24日ほど、期間4~5日、最後の方は経血量少ない。経血鮮赤色。月経痛軽度。右関やや渋。尺脈やや弱い。左関細弱、尺脈弱い。舌胖大、滑、薄白苔。
手足のほてり、頬部の赤み、左尺脈が弱いことから、腎陰を補う薬と下痢気味、天気が悪い日に体調が悪い、舌滑から利水剤を選んだ。7日分。
2回目。2~3日で朝の目の痛みがマシになった。口渇変わらず、下痢ぎみだったのが便の形ができてきた。とのこと。両尺脈が若干強くなった。基本的にこの方剤でよいと考え、脾を温めて水の巡りをよくするために、乾姜を追加。14日分。
3回目。最初の3日目くらいで目の乾きの改善を感じたが、それ以後、横ばい。味は初めは美味しいと思ったが、数日前から美味しくない。以前、他の薬局で購入していた亀鹿二仙膠製剤も今は飲みたいと思わないとのこと。両尺脈はしっかり触れる。
心配事が多く、昔は気にしていなかったことが気になる、肋骨の下に指が入らないということから、補腎陰薬を柴胡剤に変更。7日分。
4回目。肋骨下のハリは以前よりマシ。前まで見る気分になれなかった暗いドラマを見る気になった。以前は夜中に起きた時に目が痛かったが、起きることがなくなったとのこと。気持ちの面でよいことから、基本的に同じで、乾かないように少しだけ滋陰薬を足して継続。14日分。
5回目。劇的に変化はない。継続。14日分。
6回目。目の乾きはどうか尋ねると、「言われてみれば、いつの間にかよくなっていると気づいた」とのこと。
その後、目の乾き以外の症状を改善するため薬を継続。
所感:初めは腎陰虚だと感じたが、3回目に両尺脈をしっかり感じることから、腎陰虚はなくなったと判断した。たった21日で変化したのは、実際はそれほど不足していなかったということかもしれない。その後、柴胡剤に変更して、治癒した。隔のつまりから、気が下りず、また、肝火が他の臓に波及して、頭部の症状と粘膜の乾燥が起こっていたようす。頬の赤みも陰虚ではなくそのせいだったのだろう。