60代男性
主訴:耳鳴り
現病歴:3か月前から症状が出現し、2か月前から頻繁に起こるようになった。悪化改善条件不明。突然なる事もある。朝は起こりやすく夕方は起こりにくい。平日、休日に差はなし。キーンとした高音。少し気になる程度で、人と話すのには問題なし。
その他の症状:顔は赤みがある。高血圧の薬を服用して血圧140/90程度。便秘(+)、薬で便通2日に1回ほど。冬でも冷たい飲み物を好む。飲酒5日/週。いびき(+)。歯ぎしり(-)。目やや充血、陰部の痒み(+)。排尿5回/日。右関脈やや緊。左関脈渋。舌尖やや赤、淡紅~紅舌、胖大、滑、黄白苔、舌下静脈怒張(-)。ウコン錠剤、芍薬甘草湯2包/日服用。
ウコンを減らし、こむら返りは現在無いようなので、芍薬甘草湯を中止してもらう。肝胆の湿熱を除く方剤、舌と脈から痰飲を除く方剤を組み合わせた。7日分。
2回目。耳鳴りは少し改善したが、鼓膜が張る感じ、飛行機に乗った時やトンネルに入った時のような感じが出てきたとのこと。芍薬甘草湯中止でこむら返りはないとのこと。便秘薬が欲しいとのことなので、鼓膜の張りは気滞と判断し、前回にはなかった舌下静脈怒張があること、顔色から、気滞血於を除く瀉下薬を選び追加した。7日分。
3回目。鼓膜の張りはなくなり、耳鳴りはさらに改善した。以前は1日数回だったのが、昨日はなかった。前の7日間よりも減っている。便秘薬で出やすくなったが、もう少し足りないとのこと。方剤の量を加減して7日分お渡しした。
4回目。耳鳴りは2日/週で、ほとんど気にならない。便通よく、腹痛はなし。この7日分で一度中止してみたい。とのこと。飲酒による湿熱、血於が原因だと思われるため、酒量を減らすこと、便秘薬だけはつづけた方が再発しにくいことを説明し、納得していただいて終了した。
所感:熱症状が明らかだったため、ウコンを減らしてもらい、甘草の多さも痰飲に繋がっていると判断して芍薬甘草湯を中止してもらった。ウコンは肝系や体表部を温めるため、明らかに不適だと感じた。
『金匱要略』痰飲咳嗽病脈證并治の第6条に「脈雙弦者寒也……脈偏弦者飲也」とある。現れるとしたら右の弦脈だろう。
初回は3剤を合方すると、それぞれの方剤の効果が判定できず、本当に必要なのかわからないため、1~2剤にすることが多いが、途中で追加した瀉下薬もやはり、必要だったと感じる。1週間ごとに効果を実感できたようす。