40代女性
主訴:頭痛、吐き気
現病歴:頭痛、吐き気がある。そろそろ月経が始まるが、月経前によく頭痛や吐き気が現れる。
その他の症状:脈細 舌やや紅舌、黄苔
この方は、急な吐き気で小半夏加茯苓湯をお渡しして、何度かよくなっていたことと、肝鬱気滞がありそうだが、脈細であることから、
二陳湯+当帰芍薬散を2回分お渡しした。
夕方に軽減。吐き気は治まったが、まだ頭痛は少しある。少し寒気がする。口が乾く。肋骨の下が張っている。
その数分後、嘔吐。
ややスッキリしたとのこと。
このとき、右関脈細弱、左関脈弱、弦(-)。舌乾燥、黄苔。
口や舌が乾いていたのと、右の関脈が弱かったのは、ただ、吐いたことによるものだろう。
左の関脈が弱い、弦脈(-)からすると、吐くことでもう邪は去っていたのかもしれないが、吐き気が若干残っていたので、半夏があり、補気作用もある人参が入った柴胡剤をと考え、小柴胡湯を2日分渡した。
その後、話を聞くと、2日分で治ったとのこと。
所感:
『吐方考』から抜粋
病膈上に在る者之を吐す 是吐方を用る大表なり 其の変勝て数ふべからず
吐後気逆極て多し 下気の方用て可なり或は三黄湯或は承気湯
諸々の気疾 諸々の積聚心下痞硬臓腑上に逼る者其れ平生を問て吐血亥欠血衄血の患無き者悉く之を吐すべし 後寫心の方を服すること数十日
喘息初発曁び未だ発せざる者 其の腹脉を按じて之を知り腹気堅実なるときは則ち之を吐す 後 寫心湯小承気湯の類を数十日灸数千壮
口大便吐する者之を吐して後附子寫心生薑寫心半夏寫心の類を服すること数日
腹気堅実ならざる者決して吐すべからず
腹気堅実ならざる者は之を吐すと雖も益無し
→吐方は「膈上に」邪があるものに用いるのが一般的。
症状は多彩。
吐いたあとは気逆が多いので、三黄瀉心湯や承気湯類などの気を降ろす方剤を用いるとよい。
吐血、喀血、鼻血などあるものは吐方を施すべきではない。
腹が堅く実して、脈も実しているときに吐方がよいが、虚している場合は吐方はよくない。
吐いた後は瀉心湯類を用いることもある。
正気が充実していない場合は、吐くことで、正気が虚する恐れがある。
このケースでは、吐後に顔は赤くなく、脈も強くなかったので、三黄瀉心湯や承気湯類は思い浮かばなかった。黄苔があったので、半夏瀉心湯でもよかったかもしれない。
現代では「吐かせる」治療をしないため、『吐方考』を読もうという気になれなかったが、吐こうとする体の機序や、吐いた後の体の状態を考えるためにも、一度目を通しておこうと思った。