中医学では、不妊は不孕(ふよう)といい、不孕が起こる状態は、
腎虚(じんきょ)
肝鬱(かんうつ)
痰湿(たんしつ)
血於(けつお)
の4つに分類されています。
腎虚では初潮が遅い、腰や足がいつもだるい、尺脈が弱いなどの症状が現れます。
腎虚は腎陰虚(じんいんきょ)と腎陽虚(じんようきょ)に分けられます。
腎陽虚では、寒がり、生理は周期が遅く、日数は短め、量が少なく、月経中に下痢ぎみになるなどの症状が現れます。
腎陰虚では、手足がほてり、生理の日数は短め、量は少なめで月経前より月経後半の方が体の調子が悪くなるなどの症状が現れます。
腎虚タイプは、生命力が足りていないと言うと、イメージしやすいかもしれません。子供を産むことは、生命力を分け与えることなので、母体に生命力の余裕がないため、妊娠の準備ができない状態です。不妊の方はこのタイプを兼ねていることが多く、何らかの補腎薬が必要なことが少なくありません。
この方は、腎陽虚なら鹿茸、腎陰虚ならや亀板や女貞子・旱連草などを服用して、補腎します。妊娠できる体にたどり着くまでに、体が温まってきたり、ほてりが取れてきたり、疲れが溜まりにくくなったりすることで効果を実感できます。
肝鬱では仕事やプライベートでイライラすることが多い、鬱々とした気持ちになりやすい、ため息が多い、胸や肋骨の下あたりが詰まったように感じる、生理に関しては周期は短くも長くもなることがあり、PMSが重いなどの症状が現れます。
肝鬱タイプは、日々のストレスが精神的、肉体的にうまく発散できずに溜まってしまっている方で、柴胡や香附子、烏薬や木香などを服用します。肝鬱は気の流れが悪くなった状態です。気はエネルギーであり、血や水を動かすのもエネルギーである気の働きです。エネルギーの流れが悪くなった状態なので、同時に血の流れも悪くなりやすく、肝鬱と血於は1人の方に同時に現れやすいです。
痰湿というのは、体の中で動かなくなった水をイメージしてください。ねばねばして気血水の流れを阻害します。
痰湿ではぽっちゃりした体型、雨の日に頭痛がする、雨の日は特に体がだるい、すぐにお腹がいっぱいになる、生理に関しては周期が遅れることもあり、経血がねばねばしていて、おりものが多く、少し血の塊が混じるなどの症状が現れることがあります。
痰湿タイプは、食べ過ぎの人や、もともと胃腸が弱い方がなりやすいタイプです。
漢方では、脾(≒胃腸)は水を処理する働きがあり、体の中の痰湿は脾(胃腸)で生じると考えます。
胃腸が弱ければ、人参や唐白朮、茯苓などで胃腸を強くして水を処理する力を高めて痰湿が生じないようにします。胃腸が弱くない人では蒼朮や陳皮・半夏などで痰湿を乾かしていきます。
血於は、血の滞りを意味します。於血という言葉をご存知の方は、ほぼ同じだと考えてくださって構いません。血於では、痔になりやすい、顔にシミがある、サメ肌、冷えのぼせがある、子宮筋腫があるもしくはなったことがある、生理痛が重い、経血に塊が混ざる、経血が黒っぽいなどの症状が現れます。
於血は、いろいろな原因で起こるため、他のタイプを兼ねていることが多いですが、とりわけ、肝鬱を兼ねていることが多いです。肝鬱タイプは血を動かす気(エネルギー)がスムーズに流れないため、於血と重なっていることが多く、この場合は、気と血どちらも巡りを改善させるように薬を作ります。
中医学の基本的な分類は以上ですが、実際には、まずはお腹の調子を整えるのが良い方、冷えを重点的に取り除くのが良い方など、様々なので、その方に合った体のバランスを整える薬を併せて服用していただくことが多いです。
漢方ではこのような症状を体質判断の手がかりにすることを知っていただいて、当店に来ていただいた際には、ご自身の体について、色々お話ししていただけるとありがたく思います。
※文字化け防止のために、「病だれ+於」を「於」に置き換えています。
症例はこちら↓
https://halenova.com/blog/?cat=41