30代女性
主訴:冷え症、妊活中で体質を改善したい
現病歴:手足の冷え症で、夏でも冷える。お風呂に入ると、太もも、お腹、腰まわりも冷えていたとわかる。夏よりも冬が苦手。体温36℃台前半、昔は35℃台だったが、くつ下を履いたり、湯船にしっかり漬かるのを習慣にしてから少し上がった。基礎体温は高温期が36.7℃を越えたことがない、きれいな二相にならずガタガタ。36℃台後半になると、微熱のように感じる。妊活を始めて半年で、薬はまだ服用していない。流産経験なし。
その他の症状・所見:5~6年前から胃痛(+)、逆流性食道炎(+)。今はストレスのせいか、半年に1回胃腸の調子が悪くなる。ここ2~3年は嘔吐や下痢があるが、検査で異常なし。疲れやすい(+)。ストレス多い。血圧80~90/40~50で低め。軟便気味。月経周期28~40日で不定期、期間は7日、経血量は始まって数日が多い。経血は濃い赤色、塊なし。生理痛は軽い時もあれば、薬を飲んでも起き上がれないほど辛い時もある。生理前には、イライラ、落ち込み、胸の脹り、肩こり、食欲増進、むくみ(+)。
肝気鬱結、腎陽虚と判断。肝気鬱結の薬と霊鹿参を14日分お渡しした。
来店2回目。服用後1週間くらいから、何となく手足の冷えを感じにくくなっている。基礎体温は36℃以上で推移。この2週間は胃腸の調子はよく、便通も問題ない。前よりお腹が空いているように感じる。とのこと。
同じ薬を10日分。
来店3回目。霊鹿参を飲むと空腹感があり、3日ほどやめている。体温は平均して0.5℃あがった。手足の冷えは感じにくくなった。生理がきたが、生理前に焦りやイライラ、落ち込みがあった。とのこと。
鹿茸でしっかり温まったが、強すぎたのかもしれない。一旦、中止して、煎じ薬のみ。肝気鬱結の方剤に脾虚の方剤を合わせて11日分お渡し。
来店4回目。空腹感が減った。悪化はない。体温は36℃以上を保っていて、漢方薬を飲みだしてから、明らかに平均体温が上がっている。前回と同じ薬を27日分。
来店5回目。妊娠した。現在6週目。冷えは今のところ大丈夫。秋口から冷えるかもしれないので、また相談に来たい。とのこと。
話し合って、一旦、薬をお休みすることになった。
産後には、悪露を出し切ったり、肥立ちをよくするためにお薬を服用した方がよいと思う。
所感:生殖機能には、腎・肝の機能が直接的に深く関わっている。基礎体温や生理周期、PMSから、肝の気滞は必ずあると感じた。妊娠できないのは、少なからず、腎の不足があり、この場合、体の中心の冷えから、腎陽虚が絡んでいると判断した。不妊の際に腎精を補充するには、多くの場合、植物では力不足で、動物生薬を使用する。今回、腎の不足が少なかったせいか、すぐに基礎体温が上がり、少量で済んだのはよかったと思う。
途中で、鹿茸製剤を中止したが、鹿茸が無ければ、ここまで十分に体温が上がらなかったはずだと思う。1ヶ月弱の服用で、数か月、数年と、効果が持続するのか気になる。