柴葛解肌湯(≒葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏;左の組み合わせは柴葛解肌湯に似せてつくった代替品)がコロナに効くとか何とか話題になっていますね。
かぜやインフルエンザの様な症状に対する柴葛解肌湯の使い方について少しお話しします。
(以下の点を踏まえてお使いください。コロナ以外にも使え、常備薬には適しているので、ご希望の方はメールやお電話でご連絡ください。)
急性病に柴葛解肌湯を使う場合は、邪に勢いがあり、正気と争うため症状が強い傷寒で、太陽、少陽、陽明の症状が同時に出た時、もしくは、すぐに陽明まで進みそうな気配がするときに使います。
まず、初めのポイントは「傷寒」、つまり寒邪(冷え)による感染症ということです。発症からさむけを全く感じなければ、傷寒ではなく、温病(熱による感染症)と考えられ、柴葛解肌湯の中に含まれる桂枝と麻黄が邪魔、というより悪影響を及ぼします。温病の場合、強く温める生薬は使わず、熱による水分の損失を恐れて津液(体の水分)を守るために強く発汗させる生薬は使いません。
発症してから一度もさむけがない、背中や首のこわばりがない、関節痛もないのであれば、ほぼ間違いなく傷寒ではいため、柴葛解肌湯は適していません。
次のポイントは、症状が強いということです。
柴葛解肌湯が適しているのは、邪と正気が戦って激しい症状が出ている状態なので、大した熱がなく、さむけも関節痛もひどくなく、食欲もある場合は、傷寒や温病の初期として方剤を選んだほうがいいです。(ただし、適切な方剤を選んだとしても、そこから病期が進むこともないわけではありません)
症状が強いかどうかは誰が見てもわかることなので、判断しやすいのではないかと思います。
最後に、太陽、少陽、陽明の三陽にまたがる症状が出ていることです。
太陽は表証、例えば頭痛、発熱、悪寒、首や背中のこわばり、関節痛など。少陽は半表半裏証、例えば、肋骨下の脹り、口苦、吐き気、さむけと熱感(発熱)が交互にくる、食欲がないなど。陽明は裏証、例えば口渇、高熱、多汗、熱いものを嫌がるなど。
太陽、少陽、陽明の全ての症状が出ていると、柴葛解肌湯の的中率がかなり上がります。
ただ、これに関しては、絶対ではなく、陽明病の症状まで出ていなくてもよいように感じます。
この3つを参考にすることで、柴葛解肌湯の効果がぐんと上がります。
柴葛解肌湯に関して、西洋医学的にコロナに対するエビデンスが出ているみたいですが、無作為に柴葛解肌湯を投与したせいか、症状改善まで日数がかかりすぎています。
本当に柴葛解肌湯の証であれば、1~2日の内に症状が激減すると感じているので、そういった結果を見ていると、本来適応でない外れたもの、やや外れたものにも、柴葛解肌湯を投与して、日数がかかりながらも力ずくで何とかもっていっているような印象があります。
漢方薬の臨床試験のほとんどに言えることですが、本当に柴葛解肌湯の証であった人と、柴葛解肌湯が最適ではなく他の漢方薬ならもっとはやく改善した人が入り混じっている、ただし、柴葛解肌湯の証に近い人が割合多かったことで、統計学的有意差が出たものと想像できます。
(漢方を知らない治療者には理解できないかもしれませんが)季節や地域が違うと、柴葛解肌湯の有効率がかなり変化するのではないかと思われます。
まあ、何でもかんでも柴葛解肌湯でバチンと治れば、世話ないです。そんな楽なことありません。
ちなみに、慢性病に対して使用する場合は、上記とは違う使い方をしますのでご注意ください。