前立腺肥大は、尿を出す、溜める、出した後の3つに関する症状が現れます。
出すことに関する症状として、尿の勢いが弱い(尿が分かれて出る)、出始めるまでに時間がかかる、尿が分かれる、尿が一度に出きらない、尿をするときに力まなければならないなどが現れます。尿道の周りにある前立腺が大きくなることで、尿道が圧迫され、このような症状が現れます。
溜めることに関する症状として、頻尿、急にトイレに行きたくなる、漏れてしまうなどが現れます。
出した後の症状として、残尿感や下着に尿がついてしまうなどがあります。
漢方では、於血(おけつ;血の滞り)、湿熱、脾や腎の弱りなどが関連して起こるとされています。
表面的には於血と考えられても、於血をつくる原因を考えないといけません。於血は必ず2次的なものであり、於血を引き起こす原因があると考えます。原因として、気滞、湿熱、脾気虚、腎陽虚などを考え、体質的なものでなければ、食事、睡眠、運動が深く関わっています。
尿の症状が強い場合は、湿や熱が絡んでいることが多いです。こちらも、原因を考え、その原因と共に対処することで、効果が上がります。
1人の中でも、いろんな要因が絡んで症状が出ていますが、タイプ別に分けてみると、以下のようになります。
脾(≒消化管)が弱いタイプでは、尿や下腹部の症状として、小便がポタポタ漏れる、スッキリしない、下腹部が脹って重い、力まないと尿が出ないなどが現れます。
他にも、体がだるく、呼吸が浅い、呼吸促迫、言葉に力がない、さむけがある、顔色が黄白色、食欲不振、あるいは脱肛、淡白舌、白苔、脈沈細弱などの症状が現れます。
このタイプには、胃腸を強くする薬を基本に、利水薬を加えていきます。
腎が弱いタイプでは、尿の症状として、頻尿、スッキリしない、ポタポタ漏れるなどが現れます。他に、めまい、頭がはっきりしない、耳鳴り、足腰が重くだるいなどの症状が現れます。
このタイプはさらに、2つに分かれます。
体の冷却水が不足しているタイプでは、不眠、多夢、喉が渇く、口が乾燥する、手足がほてる、舌が赤く苔が少ないなどの症状が現れます。こういった方には、腎の潤いを増やすお薬を基本にして、少し熱を冷やす薬と血の巡りを良くする薬も加えます。
体の熱が不足しているタイプでは、精神的な疲れ、手足が冷える、冷えた環境や飲食物が嫌い、顔色が悪い、舌が白っぽいなどの症状が現れます。こういった方には、腎を温める薬を基本にして、利水薬や血の巡りを良くする薬を加えます。
不要な水と熱が下腹部に溜まっているタイプでは、尿や下腹部の症状として、頻尿、尿が黄色く灼熱感あるいは渋って痛い、もしくは小便が出ない、下腹部が脹って落ち込むあるいはひきつれる、脹って痛むなどが現れます。この他に、口が苦く粘る、便秘、舌が紅い、苔がべっとりしているなどの症状が現れます。
このタイプには、湿熱を除く薬か、熱が強く感じられれば、そこへ炎症を抑える薬を加えます。
血流が悪くなっているタイプでは、尿や下腹部の症状として、小便がスムーズに出ない、下腹部が脹って落ち込むあるいはひきつれるあるいは脹って痛む、血尿があるなどが現れます。他に、舌が暗い紫、脈が渋あるいは弦などの症状が現れます。
このタイプには、血の流れを良くしながら同時に炎症をとる薬を使います。
上に記した通り、これらが混ざったタイプがあり、症状やその程度を聞いて、どの薬を多く使うかを決めていきます。
症状のうち、残尿感や頻尿には、水の摂り過ぎが関わっている場合があります。
「健康の為に」「血液をさらさらに」などの理由で喉が渇いてもいないのに水分を摂取しすぎている人は、まず、水分摂取量を減らしてもらいます。水はけのよい体質の人は多めに水分を摂取しても構わないのですが、日本は湿度の高い気候であり、さらに日本人のほとんどは、水はけの悪い体質です。水分の過剰摂取で尿の症状が出ていることがあるので、症状から判断して、水滞になっている人は、薬と一緒に、そういった生活の改善をしてもらいます。
この他、ご本人が気づいていない、於血、湿熱の原因となる生活習慣や、脾、腎によい食事についてアドバイスすることもあります。
お困りの方は、男性の薬剤師が対応いたしますので、一度ご相談ください。
※文字化け防止のために、「病だれ+於」を「於」に置き換えています。