60代女性
主訴:湿疹(アトピー性皮膚炎?)
現病歴:肩関節周りに小さな赤いプツプツ、胸の間と胸の下に横に線を引いたように湿疹、耳の後ろマスクの当たる所に湿疹、デリケートゾーンのかゆみ、頭頂部付近のかゆみ。アレルギー検査で特に異常なし。子供のころから肌が弱かった。ステロイドを塗ると2~3日で治るが止めたら再発。アトピーはもともと持病で、今回の湿疹もアトピーだと思う。
その他の症状・所見:
頭皮は乾燥してめくれている。かぜを引きやすい(-)。喘息もち。頭、上半身の多汗(+)、下半身はあまり汗をかかない。寝汗(-)。血圧低め(90/50)。後溏(+)、2~3回に分けて出る。食欲あり。口乾、口渇(+)、喜温飲。寝付き良いが中途覚醒あり。夜間尿(-)。頭痛、頭重(+)。のぼせ、めまい、立ちくらみ(+)。目の充血(+)。お腹が脹りやすい。少し前からかぜぎみで、鼻づまり、鼻水、のど痛、咳がある。
右関脈やや滑、やや弱、厚みがあまりない。左寸脈やや力なし、関脈やや緊張、やや有力、太さはある、沈取で極端に弱くなる、尺脈やや弱い。舌やや暗赤、中央無苔、裂紋、辺縁黄膩苔。
肝経の湿熱と考えたが、症状には関係がないものの体質として脾気虚もあると思ったので、湿熱をとる薬に、炎症を助長しない程度に黄耆を含む方剤を少し混ぜた。7日分お渡し。
2回目。胸の部分が真っ赤だったのがマシになり、肩も少し色が薄くなった。便通は固くなった。腹の脹りやガス感は変わらず。のどの痛みと鼻の症状は3日でよくなり、それに驚いた。とのこと。脈を見せてもらうと、前回に比べて、左右ともにかなり弱い。聞くと、1週間の仕事のサイクル上、今日が一番疲れているとのこと。舌は赤みが減り、裂紋も少し減っている。同じお薬を14日分。
3回目。最初の7日でよくなった後、悪くはなっていないがあまり改善なし。皮疹や舌の所見などから駆於血薬を追加。14日分。
4回目。湿疹は枯れたような感じ、かさかさしていない。頭部の熱感、範囲や痒み減少。前回は変化なかったが、今回はかなり改善したとのこと。補血、補脾を少し強化して14日分。
5回目。かなりよくなっているが、デリケートゾーンの湿疹、痒みだけ治りが遅い。10段階でいうと、前は5、今は3~4くらいで、少しマシかなくらい。とのこと。
もう一度、詳しく問診すると、足が冷えやすい(-)、他人より薄着。疲れやすい(-)。睡眠、食欲問題なし。目の疲れ(-)。排尿時違和感(-)、尿量多い、薄い黄色、夜間尿(-)。むくみ(+)。口渇(+)、喜冷飲(-)、常温か温かいものを飲みたい。曇天時頭痛以前よりマシ。イライラ(-)。
湿熱下注として、薬を足して14日分。
6回目。服用して1週間くらいで痒みなくなった。デリケートゾーンなどの赤み無くなった。口渇は依然としてある。今まで変化がなかった舌辺縁の白黄膩苔がやや減少。同じ薬を14日分。
7回目。もう赤みも痒みもない。とのこと。薬を減らしていきましょうとお話し。
所感:2回目来店時の脈の弱さに驚いた。舌に比べて、脈はその時の体の状態を鋭敏に反映しているように思う。初回にこの状態で来られたら、1回で正しい判断ができていたかわからない。その日の体調も聞きながら四診を行わないといけないと感じた。
最初に黄耆や白朮を入れておいたおかげで、湿熱を取る方剤で体のだるさなどの副作用が出なかった可能性はある。
※文字化け防止のために、「病だれ+於」を「於」に置き換えています。