70代男性
主訴:#1こむら返り・#2便秘
現病歴:
#1ゴルフをしていると後半に足がつる。芍薬甘草湯を飲んで、以前は効いていたが、効かなくなった。夏もつる。つりやすい時間帯はない。足に毛布をくるんで寝ると多少マシ。
#2直腸がん切除後から排便障害あり。酸化マグネシウムで便通がある。出が悪く、ガスも溜まる。便秘で胸が悪くなる。
その他の症状・所見:
顔色やや黒い、眼瞼周囲黒い。声に力あり。
飲酒毎日。暑がりの寒がり。喜冷飲(+)。
淡紅舌、滑苔、白苔、舌下静脈怒張(+)。
こむら返りに寒熱があまりなく、於血と判断。
便秘に対しては、ガスが溜まるとのことなので、厚朴を含むものを考えた。
2つのお薬を10日分お渡しした。
10日後、飲み始めて2,3日後に一度こむら返りがあったが、それ以降(−)。
調子が良いとのことなので、同じお薬。
14日後、特に問題なく、こむら返りもない。便通も良い。
その後も、定期的にお薬を取りにいらっしゃる。調子がよければ少しずつ減らしてもいいとお伝えしている。
所感:
こむら返りは、その部位では血虚が起こっているのだろうけど、その直前の段階に何があるかを考える。自律神経の失調で血管が拡張せず血の流れが悪いのかもしれないし、血を流すエネルギー不足かもしれない、水滞や冷えで血の流れが悪いのかもしれない。
芍薬甘草湯は、血中の水分を増やして、言わば血虚を無理やりにでも改善するような薬だと思う。即効性があるので、頓服で服用して、うまく利用するなら問題ないが、長期に連続して服用するのは気になる点が2つある。
1つは、芍薬甘草湯は原因に対しては全く対処できないので、いつまでもこむら返りが起こる可能性があること。もう1つは、甘草が多く含まれているので、体内に水分が貯留しやすく、むくみが起きやすいこと。一般的に、甘草が2.5g/日以上含まれている場合は、短期間だけにしたり、減量する。続けて服用するにしても治療者が気をつけながら服用してもらう。
今回、以前効いていた芍薬甘草湯が効かなくなったのは、於血が強くなっていき、血中の水分を増やしても血の流れが改善しなくなったからだろう。