50代女性
主訴:潰瘍性大腸炎
現病歴:3年前に潰瘍性大腸炎を発症。軽度の出血、下痢があり判明。アサコールで発熱。ステロイドで治癒。2年前に再発。5か月間ステロイドを服用後、アサコールに変更。今年に入ってから症状(+)。現在アサコール1錠/日。
トイレは朝2~4回、夜1回、就寝後1回。腹痛あまりなし。粘液と血液の割合不明。便に混じる血液の色は鮮やか。便の色は少し黒っぽいときもある、薄い色ではない。便の形はほとんどの場合ないが、形があるときもある。ニンニクで悪化。旅行で症状少なくなる。曇天、お風呂で変化なし。症状があるとき、お腹を擦る。
その他の症状・所見:
子宮筋腫の既往。プライベートや仕事のストレスなし。花粉症(+)。昔は冷え症だったが、今はなし。朝に便が出た後、割とスッキリする。尿量少なくはない。食欲あり、食事量は同年代と比べて少なめ。口渇(-)、喜冷飲(-)、口苦(-)、口粘(-)。お酒週に1回。タバコ(-)。吐き気や胸やけなど(-)。ガス感(+)、腹鳴(+)。
淡白舌、白苔、胖大(苔ブラシをしている)、舌下静脈怒張(++)。右関脈やや滑、少し弱いが左関脈より強め、右尺脈○ 左関脈やや弦、微細、左尺脈○
脾虚があり、熱はそれほど強くないと判断。
参苓白朮散料+黄今湯7日分。
7日後、3日前まで血液や腹鳴改善していたが、2日前から悪化。腹鳴↑、便の匂い↑、肛門の灼熱感(-)、形のない便、ガス感↑、腹痛少し(+)、粘液が主、昨日は少し赤いものが混ざっていた。とのこと。
滑苔、紅点。右関脈やや滑、やや無力。左関脈右より弱め、締まりがない、数。
理気が足りていなかったと判断して、枳殻を用い、痛瀉要方の方意を持つように薬を組み合わせて7日分。
6日後に連絡あり。前回と同じく初めはよかったが、一昨日、昨日と症状悪化。ガスがたまり、便が生臭い。腹痛はない。食欲○、だるさ(-)。とのこと。一時的な悪化だと判断して、続けて服用してもらうようにお話しした。
その2日後来店。昨日、今日で症状が改善。トイレの回数は減少。ガス感も腹鳴も↓。前回と同じ処方。
その後、人参、黄耆が入った方剤を加えながら、徐々によくなっていき、2か月後には、トイレは朝1回、夜0回、ガス感も腹鳴もなくなり、久しぶりの旅行へ。
来店時からアサコールは全く服用していないが、かなり調子が良いようす。
徐々に正気を補う方剤の比率を上げながら、寛解期を長くしていきましょうとお話ししている。
所感:中医学では脾気虚の下痢に痛瀉要方がよく用いられるが、今回は理気が少し足りないと判断した。脾気虚があり枳実では強すぎるため、枳殻を使用。
参苓白朮散は”止める”ことが主なので、寛解期ならともかく、活動期には使わない方がよいと思われる。潰瘍性大腸炎の活動期は”動かす”ことが重要かと思う。
潰瘍性大腸炎の治療についてはこちら↓
https://halenova.com/blog/?p=3247
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