2020.11.7
前回、【新型コロナ後遺症と漢方①】で、急性期を超えた後は、漢方の出番であることをお話ししました。
(こちらもご参照ください→【新型コロナの感染予防・重症化予防・後遺症予防】)
今回は、新型コロナ後遺症に対して、どういった方剤を使うかを紹介します。
まず、呼吸苦ですが、ウイルスの排出はなくなったのに、呼吸苦が続くのは、少陽の部位(呼吸器など)に少し邪が残っている、もしくは正気の虚により、呼吸機能が正常に働かないせいだと考えます。
この場合、肋骨下のハリ具合や、脈などから邪と正気の状態を判断して、方剤を決定します。
嗅覚障害では、体内で湿や熱を生じているのか、於血(血の停滞)があるのか、肺気が虚しているかなどを考えます。
熱が残っているせいで嗅覚が障害されている場合、多くは鼻が詰まったり、鼻水に色がついたりします。その熱が肺、脾、肝のどこにあるかを周辺症状から判断します。
於血がある場合、頭痛や舌の於斑、渋脈を伴うことがあり、活血薬を使います。
肺気虚がある場合、大きな声が出にくかったり、息切れしたりしやすくなります。さらに、脾気虚もあるかを判断して、方剤を決定します。
だるさは、気虚、気滞、水滞などを考え、方剤を決定します。
咳は呼吸苦と同じように、余邪や正気の虚を考えるほか、肝から肺への影響で気逆が起こっていないかなどを考えていきます。
味覚障害は、何も味を感じないのか、1つの味だけ感じているのか、それとも何も食べていなくても口が苦い、甘いなどを感じているのかに分けて考えます。何も味を感じていない場合、脾(消化管)の問題とし、何も食べていなくても味を感じる場合は、酸っぱい、苦い、甘い、塩辛いがそれぞれ、肝(自律神経や肝臓の役割)、心(中枢神経や心臓の役割)、脾(消化器)、腎(ホルモンや腎臓の役割)に問題があると判断することが多いです。
抜け毛が増える場合、「髪は血の余り」と言われ、髪と血は深く関わりがあるため、コロナ(邪)と正気(体力・気力)の争いによって血が消費されたことを第一に考えます。他に気の不足、気が上に昇っている、水の停滞なども考慮します。
発症は男性より女性に多く、40代が一番多いとも言われているので、腎陰の不足なども考えます。
気力の低下、うつ傾向などでは、気の不足、気の巡りの悪さを中心に考えていきます。
また、西洋医学的には、新型コロナに感染すると、血栓(血の固まり)ができやすくなるため、全ての症状に対して、於血の所見がないかを注意深く観察し、血の流れをよくする薬を使うことがあります。
新型コロナ後遺症も、主な症状と、その周辺症状をしっかり見分けることで、適切な方剤が選べます。
ご自身の体について、まずはご自分で詳しく観察してもらい、気付いたことを詳しく伝えていただくことで、より正確に判断できるようになります。
※文字化け防止のために、「病だれ+於」を「於」に置き換えています。